行政機関に対して、パブリッククラウドなどのクラウドサービスの利用を禁じていたオランダ政府が方針を変える。その背景には何があるのか。オランダ政府デジタル化省の副大臣の話から探る。
オランダの行政機関で、パブリッククラウドをはじめとするクラウドサービスの利用が可能になる。プライバシーとセキュリティのリスクを懸念し、オランダ政府はこれまで、オンプレミス型プライベートクラウドの使用のみを許可していた。
クラウドサービスのセキュリティは向上し続けている。ソフトウェアのアップデートやパッチの適用など、クラウドサービスにおけるインフラ管理作業は容易になった。こうしたクラウド技術の進化を受け、オランダ政府はクラウドサービスの利用方針を変えた。
オランダ政府の新たな政策「National Cloud Policy」(国家クラウド政策)により、同政府の各機関は、クラウドサービスの利用が可能になった。オランダ政府デジタル化省の副大臣を務めるアレクサンドラ・ファン・ハッフェレン氏は、オランダ下院への書簡で、クラウドサービスは「柔軟かつ効率的で、デジタル政府へと成長するための好ましい影響をもたらす」と説明。初期コストを抑えられること、従量制課金によりコストの透明性を高められることを強調した。
ファン・ハッフェレン氏は書簡で、クラウドベンダーが自社のクラウドサービスのセキュリティ確保に「多額の投資をしている」と指摘。同氏によるとその投資額は、オランダ政府が情報セキュリティに投資可能な額を上回る。そのためクラウドサービスのリスク管理は、昔よりもしやすくなっていると同氏はみる。
厳格な利用条件が設けられているものの、オランダの公共サービスにクラウドサービスを採用できるようになった。使用条件の例として、個人データの処理方法が挙げられる。住民や組織の登記簿データ、特殊な個人データの保存と処理には、クラウドサービスは使用できない。行政機関が機密情報をクラウドサービスで管理することも禁止だ。個人データの保存と処理は全て、GDPR(一般データ保護規則)を順守する必要がある。
クラウドサービスの使用に関連するリスクの評価や監視責任を担うのは、そのクラウドサービスを利用するオランダ政府の各行政機関だ。「オランダの利益に反するアクティブなサイバープログラム」を保持する国の企業が提供するクラウドサービスは利用できない。オランダ国防省は、この新しい政策から除外され、依然としてクラウドサービスの使用は許可されてない。
後編はクラウドサービス利用許可に伴って、オランダ政府が直面するリスクを整理する。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
10分でできるデジタル広告最適化 2500億通りのパターンを分析
ノバセルは、デジタルマーケティング領域の新ツール「ノバセル アナリティクス for デジ...
「怒り・恐怖」でクリックを生まない“ポジティブなSNS”は本当に作れるか BuzzFeedが挑戦
BuzzFeedが脱「SNARF」のポジティブなSNSを立ち上げる。狙いは何か。
「逆Z世代」の実態 Z世代のタイパ意識は意外と高くない?
自分はZ世代ではないと考える「逆Z世代」が増加している。大広とD’Zlab.が共同で実施し...