大手クラウドベンダー各社は、行政IT市場への攻勢を強めている。その背景には、自治体のIT担当者が重要なデータを管理する際に直面する、“ある問題”があった。
インディアナ州のブーン郡は2018年から、保安官事務所で記録する大量のデータを保存するために、Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」で構築したアーカイブ用ストレージシステムを利用している。保存対象となるデータには、警察官や保安官のボディーカメラから取得したデータや、係争中の訴訟と過去の訴訟に関連する記録データが含まれている。中編「自治体が『Azure』を採用 “オンプレミスより安い”というデータ保管コストは」に続く本稿は、同群の事例と行政IT市場の動向を説明する。
ブーン郡のIT業務を請け負うGovernment Utilities Technology Service(GUTS)で、同郡担当部門の責任者を務めるショーン・ホラン氏らのチームは、Azureでのストレージシステム構築を決定する前に、オンプレミスのストレージシステムをオールフラッシュストレージ(全ての容量をフラッシュストレージでまかなうストレージアレイ)にすることも検討。最終的にはDell EMC製のフラッシュストレージとHDDのハイブリッドアレイに決定した。ホラン氏が調べたオールフラッシュストレージの構成は総額で100万ドル近くだったが、ハイブリッドアレイは12万5000ドル(約1375万円)だった。
一方でブーン郡の全データを網羅して保管するためのストレージシステムにクラウドサービスを採用し、クラウドインフラを拡大し続けることは望ましくないとホラン氏は付け加える。「なぜならデータは雪だるま式に増えていくからだ」とホラン氏は指摘する。同氏はボディーカメラなど、データを取得するためのデバイスの活用方法を見直すことで、無駄のない記録とデータ生成が可能になると主張する。「われわれは常に、データの取得プロセスを改善する方法を見つけるよう努めている」(同)
行政機関はデータをクラウドサービスに保存することの利便性を認識している。一方で「法規制により誰が、どの部門で、どのようなストレージ事業者と契約できるかが制限されている」と、ITコンサルティング会社Evaluator Groupのアナリスト、デイブ・ラッフォ氏は指摘する。そうした法規制により、いったん契約や入札を通じてホワイトリストに登録された企業には「大きな収益を見込める市場が開かれることになる」とラッフォ氏は語る。
ストレージベンダーのVAST Dataは2021年8月、政府機関向け技術を扱う子会社VAST Data Federal(VAST Federalの名称で事業展開)を通じて、米国防総省から1000万ドル相当のオンプレミスストレージシステムおよびプライベートクラウドの構築案件を受注したと発表した。一方でAmazon Web Services(AWS)とMicrosoft、Oracle、Googleを含むクラウド大手は、同じく国防総省に提案された100億ドル規模の防衛基盤統合事業(JEDI:Joint Enterprise Defense Infrastructure)の契約を巡り、法廷闘争に巻き込まれることになった。「行政機関がユーザーとなる市場を狙うベンダーはたくさんある」(ラッフォ氏)
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