Microsoftは「Microsoft Azure」の新しいリージョン「Azure Government Top Secret」を、国家の情報機関向けに提供する。同リージョンの特徴とは。Microsoftの戦略は。
Microsoftは、米国のインテリジェンスコミュニティー(情報機関)の利用に特化した「Microsoft Azure」のリージョン(地域データセンター群)の運用を開始した。「Azure Government Top Secret」と名付けた同リージョンの構築には、ネットワークやサーバなどの設備を隔離する「エアギャップ」という手法を用いている。Azure Government Top Secretの主な用途は、政府の最高機密データの保管や処理だ。
提供開始当初、MicrosoftはAzure Government Top Secretで60個のAzureサービスを利用できるようにし、今後も利用可能なAzureサービスを追加する。同社は情報機関のクラウドサービス移行が進むよう支援する。
MicrosoftのAzure Global担当コーポレートバイスプレジデントを務めるトム・キーン氏はAzure Government Top Secretについて、同社のブログエントリにこう記載する(以下は日本語版から引用)。
これらの新しいAzureのエアギャップのあるリージョンにより、米国のトップシークレットレベルに分類される国家安全保障ワークロードの提供を加速します
キーン氏は情報機関が直面している課題として、
などを挙げる。
MicrosoftがAzure Government Top Secretを構築したのは、あらゆる米国政府機関の顧客にクラウドサービスを提供するという同社の戦略の一環だ。同社は「米国の情報機関や米国国防総省、さまざまな連邦民間機関と緊密に連携することで、サービスのセキュリティを向上させつつ、データの利用規模や処理速度を高めている」と説明する。
キーン氏によると、Microsoftは1日当たり8兆件を超えるサイバー脅威の兆候を集め、それらを人工知能(AI)システムや世界的なセキュリティ専門家のチームで分析。「他社の追随を許さないデータ保護を実現している」(同氏)という。
Azure Government Top Secret提供開始の発表は、米国防総省の情報機関である米国国家安全保障局(NSA)がMicrosoftの競合企業であるAmazon Web Services(AWS)と結んだ100億ドルのクラウド関連契約の結果に対し、Microsoftが抗議している最中のことだった。MicrosoftはNSAが「適切な評価」を行わないままAWSに発注したと主張し、この契約に意義を唱えるために米国政府監査院に入札抗議を提出する事態にまで至っている。
MicrosoftとAWSの大手クラウドベンダー2社が100億ドルの契約を巡って対立したのは、これで2度目だ。過去には米国国防総省が10年間にわたるクラウドプロジェクト「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure)の契約をMicrosoftと締結したときに、AWSはその決定に抗議することを決めている。
単一ベンダーによるJEDI契約は2021年8月時点で棚上げ状態になっている。米国防総省はJEDIを撤回し、複数クラウドベンダーの利用を視野に入れた新しい契約に置き換え、MicrosoftとAWSの両方の技術を採用する方針に転換している。
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