Uberの「100万人分以上の個人情報漏えい事件」はなぜ起こったのかUberが個人情報の取り扱いで犯したミス【前編】

オーストラリアのプライバシー監視機関の調査によって、個人情報を保護する適切な措置をUberが講じていなかったことが判明した。報告書の情報から、問題が発生した背景を読み解く。

2021年10月11日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 オーストラリアのプライバシー監視機関であるオーストラリア情報委員会(OAIC:Office of the Australian Information Commissioner)は、Uber Technologiesの情報が漏えいしていたことを突き止めた。同社は保有する約120万人分のオーストラリア在住の顧客およびドライバーの個人情報を保護し切れず、2016年10~11月に発生したサイバー攻撃によってこれらの情報が漏えいしていたという。OAICはこの問題を特定後、Uberの米国本社とオランダ法人を詳細に調査した。

Uberが“あれ”をしなかったことが漏えいを招いた

会員登録(無料)が必要です

 Uberは攻撃者にデータを破棄するよう要請しており、不正アクセス発生後に攻撃者がデータを悪用した形跡はない。OAICは、オーストラリア国民の個人情報を保護する対策を同社が講じていたかどうかに焦点を置いて調査を進めた。

 オーストラリアのプライバシー関連法に従って国民の個人情報を不正アクセスから保護し、データを破棄または匿名化するという対処を、Uberは実施していなかった。「このことから、同社はオーストラリアのプライバシー関連法に違反していると言える」と、OAICで情報コミッショナーを務めるアンジェリン・ファルク氏は語る。Uberは、オーストラリアのプライバシー関連法準拠に必要な手続きやシステムを実装するための措置も講じていなかった。

 この情報漏えいに関するOAICの報告書によると、攻撃者はソースコード共有サービス「GitHub」にあるUberのリポジトリ(ファイルやディレクトリの状態を保存する貯蔵庫)で、クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)の資格情報を見つけた。その資格情報を悪用して、クラウドストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)から、運転手データなど16個のファイルを不正にダウンロードしたという。これらのファイルはバックアップ用のファイルであり、データ移行用としてUberが自社の標準プロセスを踏まずに作成したものだ。同社はこれらのファイルに暗号化を施していなかった。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 ServiceNow Japan合同会社

限られた人材でインシデントや脆弱性への対応を迅速化、その鍵となるのは?

セキュリティ対策チームの57%が人材不足の影響を受けているといわれる昨今、インシデントや脆弱性への対応の遅れが、多くの企業で問題視されている。その対策として有効なのが「自動化」だが、どのように採り入れればよいのだろうか。

市場調査・トレンド ServiceNow Japan合同会社

増加の一途をたどるランサムウェア、攻撃に対して先手を打つには?

さまざまなITツールの導入が進んだことで、脅威アクターにとっての攻撃対象領域も拡大し、ランサムウェア攻撃が増加し続けている。しかし、多くの企業で対応が後手に回ってしまっている。この状況から脱却するにはどうしたらよいだろうか。

技術文書・技術解説 ServiceNow Japan合同会社

毎秒1.7MBが生成されるデータ時代、個人データ保護を実現する9つのステップ

世界中の企業が取り扱う個人データには、不正使用による悪影響やデータ侵害による被害といったリスクが付き物だ。今やグローバル課題となった適切なデータ利用と保護を実現するためのアプローチを、具体的に解説する。

市場調査・トレンド ServiceNow Japan合同会社

サイバー攻撃を効果的に“予測・排除・阻止”するための優れた10の方法

サイバー脅威に対するレジリエンスと脆弱性管理を強化することは、多くの企業にとって喫緊の課題になっている。リソースとコストが限られている中で、効果的に進めるにはどうすればよいのか。そのヒントを解説する。

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

セキュリティツール増が招くアラート対応やデータ管理の煩雑化、解決するには?

激化するサイバー攻撃に対抗すべく複数のセキュリティツールを導入する企業は多いが、アラート対応に追われたり、データ管理が煩雑になったりといった、新たな課題に悩むケースも少なくない。これらを解決するための6つのステップとは?

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...