Zoomは自社のWeb会議ツールを使って、テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワーク移行に取り組もうとしている。テレワーク特需の恩恵を受けた同社が考える、ハイブリッドワーク移行のポイントは。
Web会議ベンダーのZoom Video Communications(以下、Zoom社)は2021年8月末、2022年度第2四半期(2021年5〜7月期)の業績を発表した。売上高は前年同期比54%増の10億2150万ドルだった。第1四半期(2021年2〜4月期)に記録した前年同期比191%増と比べると伸び率は下がったものの、依然として高い増収率だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が落ち着きつつある米国で、企業の従業員がオフィスに戻りつつあることも逆風には感じさせない。
Zoom社はこの勢いをパンデミック収束後も維持するために、テレワークとオフィスワークを戦略的に組み合わせた「ハイブリッドワーク」への移行準備を進めている。同社のブログによれば、Zoom社が会議室用テレビ会議アプライアンス「Zoom Rooms」に追加した「Smart Gallery」は、同社がハイブリッドワークを実現するための重要な機能だ。Smart Galleryは、オフィスの会議室にいる会議参加者と、遠隔地にいる会議参加者をグリッド(格子状)レイアウトで1人1つの枠に表示する機能で、全ての参加者を画面に平等に映すことができる。
オフィスワークの一部再開についてZoom社は、従業員の声に耳を傾けながら準備を進めている。隔週で開く全社ミーティングで、計画に関する最新情報を従業員に周知するとともに、計画に関するどのような不安も安心して相談できる場を設けている。
Zoom社の従業員にとっての最優先事項は、「柔軟な勤務形態」だと同社は述べる。同社が紹介した勤務形態に関する社内アンケートによると、フルタイムのオフィスワークを望む従業員はわずか1%だった。半数以上が、テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークを、4分の1がフルタイムのテレワークを希望。残りの従業員のほとんどは、既に勤務形態をフルタイムのテレワークに切り替えていた。
自社のテレワークはうまくいっているとZoom社は認識している。それを踏まえ、同社はオフィスワークの再開を急ぐつもりはない。ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保をはじめとするCOVID-19対策が不要になるまで、オフィスワークを再開することはないというスタンスだ。同社は2021年夏にオーストラリアのシドニーにオフィスを開設したが、COVID-19の感染拡大により、すぐに一時閉鎖を余儀なくされた。
オフィスワークの再開について、「全ての企業に当てはまる方法はない」と話すのは、Zoom社で最高財務責任者(CFO)を務めるケリー・ステッケルバーグ氏だ。「引き続き従業員の声を聞き、不安を理解した上で、計画を策定していく」とステッケルバーグ氏は語る。
ステッケルバーグ氏によると、Zoom社の意思決定は全て、経営陣と従業員の間に相互の信頼感を築くという1つの目標に向かってつながっている。「信頼感が高まれば、従業員の満足感と生産性が高まる」(同氏)ためだ。
Zoom社は、製品ポートフォリオの拡充を続けている。2021年6月には、音声クラウドサービス「Zoom Phone」専用のハードウェア「Zoom Phone Appliances」を発表した。Zoom Phone Appliancesは、Poly(Plantronics)とYEALINK NETWORK TECHNOLOGYが提供している。Zoom社は2021年5月に、インタラクティブな仮想イベントやカンファレンスを制作、主催、収益化するためのシステム「Zoom Events」の投入計画を発表済みだ。
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