石油やガスへの経済的依存度を減らすために、サウジアラビアは観光産業開発に40億ドルの基金を投資する。同基金は財務や人事、調達といった業務を効率化させるために、OCIを採用した。その理由とは。
サウジアラビアの観光産業開発を支援する基金Tourism Development Fund(TDF)は、クラウドファースト戦略の一環として、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)をはじめとしたOracleのクラウドサービスを採用した。同基金は業務自動化の推進と、従業員や顧客のユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)向上のために人工知能(AI)技術の利用も試験的に実施している。
石油やガスへの経済的依存度を低減しようとするサウジアラビアのプログラム「Saudi Vision 2030」の一環として、TDFは同国の観光産業開発への投資に40億ドルの基金を用意している。TDFは、2030年までに観光部門の経済寄与率を3%から10%にまで伸ばし、100万人分の雇用を新たに生み出すことを目指している。
TDFはOracleのSaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を利用して、財務や人事、調達といった業務に利用するシステムを一元化する。これによりシステムの運用にかかるコストを削減しつつ管理性を向上。同時に事業プロセスを一元化してデータ連携をしやすくすることで、生産性の向上も目指す。
Oracleのクラウドサービスの導入によって、TDFは同基金と関係のある観光事業者に、迅速かつ高い透明性を保ちながら投資できるようになることを期待する。TDFのビジネステクノロジー担当エグゼクティブディレクター、ヤーセル・アルカスラン氏は「事業の中核業務を自動化することで、われわれの業務を迅速かつミスなく実行できるようになる」と期待する。新たなデータ分析ツールを導入することで、観光部門の中小企業を支援するための投資の効果を、リアルタイムで監視できるようにもなるという。
サウジアラビアのジッダには、OCIのリージョン(地域データセンター群)がある。そのことが、同サービスへの信頼感につながっているとアルカスラン氏は説明する。サウジアラビアの政府機関である通信情報技術委員会(CITC)は、Oracleを認定クラウドベンダーだとみなし、政府機関の利用を認めている。OCIのジッダリージョンは、CITCが定めるクラウドコンピューティングに関するフレームワーク「Cloud Computing Regulatory Framework」と、同国の国家サイバーセキュリティ庁のセキュリティモデルにも準拠している。
Oracleサウジアラビア法人のマネージングディレクター、ファハド・アル・タリーフ氏は、TDFの設立は「サウジアラビアの観光産業を刺激する取り組みだ」と強調。Oracleの業務アプリケーション群への移行によって、これからはさらにTDFの業務効率化が進むと自信を示す。
TDFはAI技術を利用した業務自動化プロジェクトも進めている。最新技術への投資はサウジアラビアにおけるIT支出を増加させている。サウジアラビアは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)以後のビジネスの変化に適応するために、新興技術を活用することを指針としている。調査会社IDCによると、同国は110億ドルをIT分野に支出する。ITは同国の石油収益への依存度を下げ、地域の収益源を多様化させるという重要な役割を果たすと、IDCは予測する。
IDCによれば、サウジアラビアのIT支出の半分以上がITサービスやスマートデバイスへの支出になる。2021年のIT支出総額は2020年より4.2%増加し、サウジアラビアの政府や財務、通信の各組織はITに約36億ドル支出すると予想している。
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