“男社会”IT部門のトップになった女性は、男女平等の現状をどう捉えているか?“異色”を生かした女性ITディレクター【後編】

英国のブラッドフォード大学で60人のITスタッフを束ねるジュリエット・アトキンソン氏。現職への道のりは平たんではなかった。アトキンソン氏はどのような“闘い”をしてきたのか。

2021年12月01日 05時00分 公開
[Karl FlindersTechTarget]

関連キーワード

CIO | ITIL | イノベーション


 英国のブラッドフォード大学(University of Bradford)でITディレクターを務めているジュリエット・アトキンソン氏は、“異色”の経歴の持ち主だ。前編「失敗で人は強くなる――60人束ねる『敏腕女性IT幹部』の“異色のキャリア”とは」は、シングルマザーだった22歳の時からのアトキンソン氏のキャリアを紹介した。後編となる本稿は同氏の視点で、IT業界における男女平等の現状を考える。

現在も続く「平等のための闘い」 アトキンソン氏が指摘する最大の課題とは?

 アトキンソン氏によると、IT業界では男女平等までの道のりは遠い。女性のキャリア形成の障壁となるのが、仕事と家庭の両立の難しさだ。同氏もその例外ではない。「これまでの仕事を通じて、『家族を養うこと』と『家族と時間を過ごすこと』のバランスの図りにくさを痛感してきた」と語る。

 もう一つの障壁は、IT業界を目指す女性に対する偏見だ。アトキンソン氏は学校に通っていた頃、コンピュータの使い方を学ぶ授業を受けていた。最初の授業日、同氏がコンピュータ授業の教室に入ったら、男子ばかりいて、女子は同氏ともう1人だけだったという。「男性教師は私を見て、冗談のつもりなのか、『タイピング授業は違う教室だ』と言った。私は非常にショックを受けた」と同氏は振り返る。

 これはかなり前の話だが、アトキンソン氏は現在もあまり状況は変わっていないとみる。「あのコンピュータ授業の教室で私は少数派だったし、今働いているIT業界でもやはり少数派だ」と同氏は言う。同氏によると、IT業界では現場はともかく管理職となると、女性の数が急激に少なくなる。「私は仕切る立場で参加した商談で、お客さんから『秘書役だ』と勘違いされたことは何回かある」(同氏)

 最大の問題としてアトキンソン氏が捉えているのは、男女の賃金格差だ。「男性の方が、同じ仕事をする女性よりも企業に『価値』を提供するという古い考えが、いまだに根付いている」と同氏は述べる。賃金に限らず、さまざまな手当てに関しても男性が優遇される傾向があるという。

 「企業のリーダーは女性が力を発揮できる環境づくりに本格的に取り組む際、採用の基準を見直したり、柔軟に働ける制度を設けたりするなど、組織や社風を根本から変える必要がある」。アトキンソン氏はそう強調する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news066.jpg

Metaに潰されないために残された生き残りの道は?――2025年のSNS大予測(Snapchat編)
若年層に人気のSnapchatだが、大人にはあまり浸透していない。一方で、AR(拡張現実)開...

news150.jpg

「猛暑」「米騒動」「インバウンド」の影響は? 2024年に最も売り上げが伸びたものランキング
小売店の推定販売金額の伸びから、日用消費財の中で何が売れたのかを振り返るランキング...

news110.jpg

Netflixコラボが止まらない 「イカゲーム」シーズン2公開で人気爆上がり必至のアプリとは?
Duolingoは言語学習アプリとNetflixの大人気ドラマを結び付けたキャンペーンを展開。屋外...