英国のブラッドフォード大学で60人のITスタッフを束ねるジュリエット・アトキンソン氏。現職への道のりは平たんではなかった。アトキンソン氏はどのような“闘い”をしてきたのか。
英国のブラッドフォード大学(University of Bradford)でITディレクターを務めているジュリエット・アトキンソン氏は、“異色”の経歴の持ち主だ。前編「失敗で人は強くなる――60人束ねる『敏腕女性IT幹部』の“異色のキャリア”とは」は、シングルマザーだった22歳の時からのアトキンソン氏のキャリアを紹介した。後編となる本稿は同氏の視点で、IT業界における男女平等の現状を考える。
アトキンソン氏によると、IT業界では男女平等までの道のりは遠い。女性のキャリア形成の障壁となるのが、仕事と家庭の両立の難しさだ。同氏もその例外ではない。「これまでの仕事を通じて、『家族を養うこと』と『家族と時間を過ごすこと』のバランスの図りにくさを痛感してきた」と語る。
もう一つの障壁は、IT業界を目指す女性に対する偏見だ。アトキンソン氏は学校に通っていた頃、コンピュータの使い方を学ぶ授業を受けていた。最初の授業日、同氏がコンピュータ授業の教室に入ったら、男子ばかりいて、女子は同氏ともう1人だけだったという。「男性教師は私を見て、冗談のつもりなのか、『タイピング授業は違う教室だ』と言った。私は非常にショックを受けた」と同氏は振り返る。
これはかなり前の話だが、アトキンソン氏は現在もあまり状況は変わっていないとみる。「あのコンピュータ授業の教室で私は少数派だったし、今働いているIT業界でもやはり少数派だ」と同氏は言う。同氏によると、IT業界では現場はともかく管理職となると、女性の数が急激に少なくなる。「私は仕切る立場で参加した商談で、お客さんから『秘書役だ』と勘違いされたことは何回かある」(同氏)
最大の問題としてアトキンソン氏が捉えているのは、男女の賃金格差だ。「男性の方が、同じ仕事をする女性よりも企業に『価値』を提供するという古い考えが、いまだに根付いている」と同氏は述べる。賃金に限らず、さまざまな手当てに関しても男性が優遇される傾向があるという。
「企業のリーダーは女性が力を発揮できる環境づくりに本格的に取り組む際、採用の基準を見直したり、柔軟に働ける制度を設けたりするなど、組織や社風を根本から変える必要がある」。アトキンソン氏はそう強調する。
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