アプリケーションをクラウドサービスに移行させた後に、想定していなかった問題が生じて、「脱クラウド」に踏み切らざるを得なくなることがある。こうした“想定外の問題”にはどのようなものがあるのか。
いったんクラウドサービスに移行させたアプリケーションをオンプレミスインフラに戻すことを「脱クラウド」(オンプレミス回帰)と呼ぶ。「そもそもアプリケーションの移行や管理の仕方が間違っているから、脱クラウドに踏み切らざるを得なくなるのだ」と言い切ることはできない。クラウドサービスの運用に必要なスキルやセキュリティの要件、コストなどは、必ずしも予測可能ではないからだ。
やむを得ない事情から、脱クラウドに踏み切らざるを得なくなることがある。クラウドベンダーがサービスを終了させたり、システム要件に関する法規制が変わったりする可能性はゼロではない。データの処理速度の大幅な短縮が必要になり、インフラの見直しを迫られることもある。
公共機関のIT導入支援を手掛けるStone Technologiesでソリューション販売担当ディレクターを務めるポール・フラック氏は「クラウドサービスとオンプレミスシステムを組み合わせた『ハイブリッドクラウド』が最善だと考えるユーザー企業は少なくない」と話す。ハードウェアの管理性を失うことを心配するユーザー企業の場合、特にその傾向が強いという。
「全てのアプリケーションをクラウドサービスに移行させようとしても、思ったようにインフラの要件が満たせなかったり、コストが予想以上に高くついたりする場合がある」とフラック氏は指摘する。こうした問題が生じた結果、ユーザー企業は最終的にオンプレミスインフラにアプリケーションを戻すことになる。
クラウドサービスはオンプレミスシステムと比較して、可視性の欠如が課題になりやすい。利用するクラウドサービスの管理方法を理解しているスタッフが、自社のIT部門の中にいなければ、新たに適切なスタッフを採用する必要がある。そうなると、さらにコストがかさむ。
オンプレミスシステムのCAPEX(設備投資)モデルに慣れているユーザー企業にとって、クラウドサービスの従量課金モデルによるコスト計算は「難しくなる可能性がある」とフラック氏は言う。
第2回は、クラウドサービスの利用を検討する際の、セキュリティ対策の注意点を説明する。
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