広告事業のFrance Televisions Publiciteは、バックアップやアーカイブのシステムをクラウドサービスからオンプレミスのインフラに戻した。同社はクラウドサービスに「不便さ」を感じたという。それは何なのか。
フランス公共放送France Televisionsの子会社であるFrance Televisions Publiciteは、クラウドサービスで稼働させているシステムをオンプレミスのインフラへと回帰させる「脱クラウド」に踏み切った。同社はバックアップやアーカイブといったデータ保管のバックアップシステムをクラウドサービスに移行させていたが、データへのアクセスのしやすさを高めるために、一部をオンプレミスのインフラに戻している。
France Televisions PubliciteはテレビやWebサイトの広告事業を手掛ける。以前はAmazon Web Services(AWS)の「Amazon S3」やMicrosoftの「Azure Blob Storage」といったクラウドストレージをRubrikのバックアップ製品と組み合わせ、データ保管システムをクラウドサービスで構築していた。
クラウドサービスからオンプレミスのインフラに戻したデータには、頻繁にアクセスが必要な契約書や取引先のファイル、France Televisionsが運営するデジタルマーケットプレースの申し込み情報が含まれている。データの容量は約250TB。広告関連のデータは引き続き、クラウドサービスで保管している。
「当社が一部システムの脱クラウドを決めたのは、利用頻度の高いデータへのアクセスに時間がかかり、ビジネスに影響が出ることがあったからだ」と、France Televisions Publiciteのテクニカルディレクターを務めるパスカル・ラフート氏は説明する。ラフート氏によれば、同社は日頃のビジネス活動に欠かせないデータを“身近なところ”に置いて、アクセスのしやすさを高めたいと考えた。
脱クラウドの決断を促したのは、France Televisions Publiciteの明確なバックアップポリシーだ。同社はどのようなデータをバックアップするかを定義し、データ量の増加を抑えるようにしている。そのためクラウドサービスの拡張性は、同社にとってそれほど大きなメリットではなかった。
今後増えるデータ量を予測し、France Televisions Publiciteはそれに合った規模のオンプレミスのシステムを導入。具体的には、NetAppのオブジェクトストレージシステム「StorageGRID」やSCASICOMPのバックアップサービス「B-Zen」を採用した。「運用の効率化を図るための新たな手段になる」(ラフート氏)。Rubrik製品の使用は継続している。
France Televisions Publiciteが脱クラウドに着手したのは2020年前半だ。2段階に分けてプロジェクトを進め、問題なくオンプレミスのシステムの利用開始にこぎ着けたという。
後編は、France Televisions Publiciteが進めているシステム刷新の全体像を紹介する。
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