ドローンの大敵「風」を5G×AIで制御 工科大学が進める自律飛行研究の中身「5G」が支える大学の研究【後編】

さまざまな産業で活用が進んでいるドローン。最大の課題である「天気の変化への弱さ」を5Gの活用で解決しようとしているのがカリフォルニア工科大学だ。何をしているのか。

2022年04月20日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)の自律システム・技術センター(Center for Autonomous Systems and Technologies:CAST)は、「5G」(第5世代移動通信システム)を活用した「MEC」(Mobile Edge Computing)の仕組みを入れた。悪天候下でドローン(小型無人飛行機)の自律飛行を可能にする研究に生かす。

 MECは、データ発生源である端末の近くでデータを処理するエッジコンピューティングのモバイルネットワーク版だ。CASTはVerizon Communicationsの協力の下、5Gを活用したMECや超広帯域無線通信(UWB:Ultra Wide Band)、AI(人工知能)技術を構内に導入した。

風を再現してドローン鍛える なぜ5Gは欠かせないのか?

 CASTの研究員は飛行中のドローンが天気の変化を迅速に把握し、最適な飛び方を自動的に判断する実証実験に取り組んでいる。ドローンが直面する大きな課題が天気の急な変化だ。CASTは3階建ての室内飛行場を設け、約2500台の小型扇風機によって「そよ風」や「強風」を再現。あらゆる種類の風への対処方法をドローンに学ばせている。

 5Gによる高速通信を利用してAIエンジンのデータ処理を高速化することで、ドローンは飛行中でも、風の種類に合わせて飛び方を瞬時に調整できるようになった。小型扇風機の仕組みの設計は、カリフォルニア工科大学の大学院生が手掛けた。CASTは他にも、ドローンが飛行する空間を90度傾けることで垂直離着陸をシミュレーションしている。

 Verizon CommunicationsはCASTのドローン研究プロジェクトの1年間の資金に加え、5G準拠のデバイスや5G活用に関するコンサルティングを提供する。同社の製品開発最高責任者のニッキ・パーマー氏は「CASTとの協力により、ドローンの自律飛行を加速化させたい」と述べる。Verizon CommunicationsはCASTの実証実験を踏まえ、5Gを中心とした同社技術の実用化をさまざまな分野に広げる方針だ。

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