クラウドサービスを利用する際は、「脱クラウド」に向けた出口戦略も併せて検討しておくことが重要だと専門家は主張する。それはなぜなのか。
クラウドサービスを利用する際は、利用をやめるまでの「出口戦略」を周到に用意しておくことが重要だ。出口戦略はクラウドサービスからオンプレミスのインフラにシステムを移行させる「脱クラウド」「オンプレミス回帰」をする際にも必要になる。クラウドサービスに関する戦略全体を設計する上でも出口戦略を立案しておくことは重要だ。
「Amazon Web Services」(AWS)のようなクラウドサービスのユーザー企業が出口戦略として考慮すべき要素は、クラウドサービスそのものに限らない。AWSであればAWSと連携しているSaaS(Software as a Service)など、サードパーティー製のサービスも念頭に置く必要がある。
クラウドサービスの出口戦略の検討は後回しにすべきではない。「クラウドサービスを利用する計画立案の初期段階から検討する必要がある」と、調査会社Gartnerでバイスプレジデントを務めるイライアス・クナサー氏は話す。
クナサー氏は「出口戦略は、クラウド戦略全体を検討する一環として立案する必要がある」と強調する。脱クラウドの実施を検討する際ではなく、事前に出口戦略を計画しておくことが重要だという。「既存のアプリケーションをクラウドサービスに移行させる」「クラウドサービスで新しいアプリケーションを構築する」――このどちらにも出口戦略が欠かせない。
脱クラウドに向けた出口戦略を早期に検討する必要があるのはなぜなのか。それは脱クラウドをしたいと考えたときに、確実かつ効果的にできるようにするためだ。コスト面や処理速度面、カスタマイズ面などさまざまな理由で、クラウドサービスからオンプレミスのインフラにアプリケーションを移行させたいと考える企業は少なくない。その際に適切な準備をしていないと移行が極めて難しくなったり、移行できたとしても期待した効果が得られなかったりする。
オンプレミスのインフラで稼働させていた既存のアプリケーションとその関連データベースを、そのままクラウドサービスに移行させ、AWSのIaaS(Infrastructure as a Service)「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)で稼働するコンテナで運用する場合を考える。この場合であれば「アプリケーションをオンプレミスのインフラに戻すのは比較的簡単だ」と考える人もいるだろう。だが注意が必要だ。移行の際、AWSのサービスに最適化させるためにアプリケーションをリファクタリング(プログラムの内部構造を改善すること)していたり、一から設計し直していたりする場合は、オンプレミスのインフラに移行させたとしても期待する運用面やコスト面のメリットを引き出せるとは限らない。
出口戦略を検討する上では、クラウドサービスで運用する全アプリケーションを脱クラウドの対象にするのか、特定のアプリケーションのみに限定するのかを早めに判断することが重要だ。「顧客に必ず推奨することがある。『クラウドサービスへの移行を検討する際は、出口戦略についても併せて評価する必要がある』ということだ」とクナサー氏は語る。
利用可能なクラウドサービスや企業のニーズは移り変わる。そのためクラウドサービスの出口戦略においては、定期的な見直しと更新も重要だ。
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