IT投資のROI改善のために、ユーザー企業はクラウドサービスの利用方法の見直しを始めている。クラウドサービスの利用時に、コストに見合った成果が得られなくなる理由とは何か。
クラウドサービスのコストが予想より高いことに気付いたユーザー企業は、ROI(投資利益率)改善のために、クラウドサービスの利用を見直し始めている。
Amazon Web Servicesの同名サービスやMicrosoftの「Microsoft Azure」、Googleの「Google Cloud Platform」などのクラウドサービスを使い、ユーザー企業がワークロード(アプリケーション)を実行することが当たり前になった。クラウドサービスの登場当初は、従量課金の料金体系がユーザー企業にとって魅力の一つとなった。物理サーバを購入してオンプレミスインフラで管理するよりも初期コストが抑えられると考えたからだ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行したことで、クラウドサービスの利用はさらに拡大した。テレワーク中の従業員が、他の従業員や取引先とコミュニケーションを取れるようにするために、ユーザー企業の間でWeb会議のクラウドサービスの導入が進んだ。サプライチェーンがCOVID-19の影響を受け、物理サーバの供給が遅れた結果、クラウドサービスでインフラを調達するユーザー企業もあった。
ユーザー企業は急速にクラウドサービスを導入したことから、計画的なクラウドサービスの利用方法を考える余裕がなかった。その結果、ユーザー企業は必要以上のクラウドリソースに資金を投じた。用途が重複した複数のクラウドアプリケーションを実行したり、オンプレミスインフラで実行する方が安価で済む大量データの分析をクラウドサービスで実行したりすると、余計なコストがかさむ。
監査法人のKPMGが最近発表した2022年の調査報告によると、調査対象となった企業の幹部1000人のうち67%が、クラウドコストから十分なROIを達成できなかった。こうした企業は、コストに見合うようにクラウドサービスの利用を見直している最中だという。
それでもユーザー企業は、今後もクラウドサービスを使い続けると考えられる。KPMGの調査では、回答者の4人中3人が、自社の戦略的なワークロードをクラウドインフラに移行させる方針だと答えている。
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