「ボスウェア」とも呼ばれる「従業員監視」ソフトウェアに強い反発が起きているのは、なぜなのか。規制派が指摘する従業員監視ソフトウェアの懸念と、トラブルを招かないための策を整理する。
ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP:Office of Science and Technology Policy)は2023年5月、米国の労働者に対して「労働者の監視や評価の目的で、人工知能(AI)技術を使用することが職場に与える影響」に関する情報提供を求めた。それを受けて消費者金融保護局(CFPB:Consumer Financial Protection Bureau)は、従業員の成果や生産性を監視する「従業員監視」ソフトウェア(通称「ボスウェア」)に関して“ある懸念”を示した。
CFPBが懸念するのは、従業員監視ソフトウェアが集めた従業員データが、データブローカー(個人データ売買事業者)を介して、金融機関や保険会社などの手に渡ることだ。こうした懸念が現実になれば、車の購入をはじめとする、従業員のさまざまな「人生の決断」に大きな影響を及ぼすことになる。
規制を求める声が上がっている従業員監視技術に、AI技術に基づく「感情認識」がある。感情認識は、表情や声などの特徴を基に、人の感情を推測する技術だ。「感情認識ソフトウェアは、女性や有色人種を分析対象にする場合、否定的な感情を割り当てる確率が高い」。Center for Democracy and Technology、American Civil Liberties Union(ACLU:米国自由人権協会)、United Auto Workers(UAW:全米自動車労働組合)をはじめとする複数の団体が、こうした見解を示している。
法律事務所Duane Morrisで雇用問題を扱う、弁護士のアレックス・カラシク氏は「既存のプライバシー規制のほとんどは、個人に関するデータを扱う際に、事前の同意があったかどうかを重視している」と指摘。従業員監視技術を使う企業は「『当社は従業員をどのように監視しているのか』を従業員に認知してもらい、十分な透明性を確保すべきだ」とアドバイスする。米国の一部の州は、従業員監視に関する通知を企業に義務付ける規則を採用している。
人事部門は「社内の各部署が、どのような従業員監視技術を使っているのかを把握することが重要だ」と、法律事務所Foley & Lardnerで雇用問題を扱う弁護士のキャリー・ホフマン氏は指摘する。「他部署が職場で何をしているかを人事部門が知らないなら、それは問題だ」(ホフマン氏)
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