BMWは自動車ブランド「MINI」の工場に「SAP S/4HANA」を導入した。この施策は同社の生産戦略「BMW iFACTORY」に基づくものだ。この戦略が目指す「自動車製造のデジタル化」とは。
自動車メーカーBayerische Motoren Werke(BMW)は2023年9月8日(現地時間)、自動車ブランド「MINI」のオックスフォード工場で、SAPのERP(統合業務)製品「SAP S/4HANA」をベースにした新システムの本番稼働を開始した。
MINIのオックスフォード工場では、プライベートクラウドでSAP S/4HANAベースの基幹システムが稼働している。BMWは今後数年の間に他工場のシステムもクラウドインフラに移行し、新たな生産戦略を推進する。MINIのオックスフォード工場はその最初の施策となる。
BMWは2023年9月11日(現地時間)、電気自動車(EV)を生産するために、MINIのオックスフォード工場とスウィンドン工場に6億ポンドの新規投資をすることを発表した。同社はオックスフォード工場について、生産ラインの拡充、車体工場の拡張、バッテリーの組み込み用エリアの新設を計画している。その他、オックスフォード工場とスウィンドン工場に物流施設を増設する。
オックスフォード工場における基幹システムの刷新は、BMWにとっては将来の自動車生産に向けた戦略「BMW iFACTORY」の一環となる施策だ。2022年にBMWの生産担当取締役(当時)ミラン・ネデルイコビッチ氏は、BMW iFACTORY戦略の目標の一つに「デジタル化」を挙げ、「自動車生産に関するあらゆる側面を新しい方法でネットワーク化し、データの透明性を最大限に高める」と説明していた。その結果「デジタルなプロセスの構築が効果的に実現できるようになる」と同氏は強調。BMW iFACTORY戦略を通じて、BMWはデジタル化を進めるためのデータに一貫性を持たせる。
BMWはオックスフォード工場において、SAPのSAP S/4HANAとサプライチェーンロジスティクス(生産から納品までの一連の工程)の管理システムを採用した。BMWとSAPは、この施策を通じて構築したデジタルなプロセスが、「将来の自動車産業の姿」を形作る青写真になると説明する。BMW iFACTORY戦略の対象となる各工場は、今後ERPシステムをクラウドインフラに移行するに当たって、SAPの支援サービス群「Rise with SAP」を利用する。
今後、BMWは全ての工場で新システムへの移行を進め、各工場にあるシステムの整合性が取れるようにする。「新システムによって関連製品やプロセス、品質、コストなどのデータをひも付けると同時に、データの一貫性と透明性を確保する」。BMWグループIT部門の最高イノベーション責任者兼シニアバイスプレジデントを務めるアレクサンダー・ブレシュ氏はそう話す。
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