「マセラティ」の自動車大手Stellantisが車載ソフト開発に「AWS」を採用する訳AmazonとStellantisの関係強化で見えた「クラウド×自動車」の可能性【後編】

StellantisはAI技術を組み込んだ車載ソフトウェアの開発にAWSを利用している。同社がクラウドサービスを積極的に採用する理由とは。

2022年03月16日 05時00分 公開
[Caroline DonnellyTechTarget]

関連キーワード

Amazon | Amazon Web Services | IT戦略


 オンライン小売りの最大手Amazon.com(Amazon)と、Maserati(マセラティ)やPeugeot(プジョー)などのブランドを持つ自動車大手Stellantisは、配送用車両へのバッテリー式電気自動車(BEV)の採用を進めるために新しい契約を結んだ。両社の関係性は電気自動車の利用だけではなく、Stellantisの技術開発にまで及んでいる。前編「Amazonが『マセラティ』の自動車大手Stellantisと関係を強める本当の理由」に続く本稿は、車両ソフトウェアの開発にAmazon Web Servicesの同名クラウドサービス群を利用するStellantisのIT戦略を取り上げる。

StellantisがAWSで実現した「STLA SmartCockpit」とは

会員登録(無料)が必要です

 StellantisのCEO、カルロス・タバレス氏は、Amazonとの技術的な連携を深めることで、「STLA SmartCockpit」を進化させることができると期待している。同社によると、STLA SmartCockpitは「パーソナライズされた直観的な車内エクスペリエンスを生み出すよう設計されたソフトウェア」だ。

 STLA SmartCockpitによりStellantis製自動車のユーザーは、娯楽やカーナビゲーション、車両のメンテナンスなどの用途で、人工知能(AI)技術を実装した車載システムを利用できるようになる。STLA SmartCockpitは2024年から世界中のAmazonの配送用車両に搭載されることが決定している。

 タバレス氏によると、Stellantisは社内のIT技術者の養成と、技術リーダーとの関係性構築を進めている。こうした取り組みとAmazonとの協働は「STLA SmartCockpitに大きな専門性をもたらす」と同氏は述べる。

 AI技術やクラウドサービスを活用することで、Stellantisは自社の車両を「パーソナル化した居住空間」(タバレス氏)に転換する。これにより顧客エクスペリエンス全体を強化し「運転中でない時でも、車両を最も望ましく最も魅惑的な場所にする」(同氏)。

 Stellantisは優先クラウドパートナーとしてAWSを指名している。STLA SmartCockpitはAWSで稼働することになる。MaseratiやJeep、Alfa Romeo、Vauxhallを含む、Stellantisの全ブランドの車両に関連するデータ管理システムをAWSへ移行させることにも取り組んでいる。

 AWSでデータ管理システムを構築することで、Stellantisのエンジニアは各プロジェクトに適したAWSサービスを利用しやすくなる。Stellantisは製品やサービスを市場投入するまでの時間を早めることも目指しているという。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

製品資料 発注ナビ株式会社

商談につながるリードをなぜ獲得できない? 調査で知るSaaSマーケの課題と対策

SaaSサービスが普及する一方、製品の多様化に伴い、さまざまな課題が発生している。特にベンダー側では、「商談につながるリードを獲得できない」という悩みを抱える企業が多いようだ。調査結果を基に、その実態と解決策を探る。

製品資料 株式会社ハイレゾ

GPUのスペック不足を解消、生成AIやLLMの開発を加速する注目の選択肢とは?

生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。