「パンデミックが多様性を妨げた」が3割 その理由と解決策は調査からに見るD&Iとパンデミック【後編】

テレワークの普及がD&Iを後押しする一方で、パンデミックに伴う投資の縮小でD&I施策に悪影響が出ていることを懸念する企業もある。調査レポートを基に、IT業界におけるD&Iの現状と将来展望について考察する。

2022年03月15日 08時15分 公開
[Clare McDonaldTechTarget]

関連キーワード

Intel(インテル) | 人事


 前編「『人材多様性の欠如』が英国でも問題視 テレワークはD&Iの追い風になるか」に続き後編となる本稿も、Intelが2021年9月に実施した調査を基に、IT業界のダイバーシティー&インクルージョン(D&I:人材の多様性を広げ、それを受容する文化を形成すること)の問題を取り上げる。この調査を基にしたレポート「The Future of Inclusion in an Evolving Workplace」によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で企業のテレワーク導入が進み、結果としてD&Iの取り組みも進む傾向にあった。調査対象は、世界の企業の意思決定者または、DEI(Diversity, Equity and Inclusion:多様性、公平性、包括性)ポリシーの策定に影響力のある従業員3136人。

D&I課題の優先事項は

 Intel調査によると、D&I課題の中でも解決を優先する事項として上位を占めた回答は「ジェンダーとエスニシティーにおける多様性の欠如」だった。回答者の47%は「女性の雇用増加」を最優先事項だと回答。39%は社内における「民族多様性の欠如」に取り組むことを重視していると答えた。「障害およびアクセシビリティーの問題を抱える人々に対する施策の強化」も、回答者の37%が念頭に置いている。

 比較的注目度が低い項目もある。例えば解決すべき課題として「セクシュアリティの多様性不足」を挙げた回答者は27%にとどまった。ただし国によって割合は異なり、イスラエルでは43%、英国では35%の回答者が関心を持っている。

 D&Iを促進する方法として、回答者の37%が「業界全体での協働を望む」と答えた。同様に37%が「D&Iに関する業界標準や国際的なベンチマークの制定」が有効だと考えている。

パンデミックがD&I施策に及ぼした悪影響

会員登録(無料)が必要です

 全ての企業がパンデミックの間、D&I施策にポジティブな影響を感じていたわけではない。回答者の28%はパンデミックが自社のD&I関連施策の推進にマイナスの影響をもたらしたと答えた。理由の一つは投資の漸減だ。企業は概して、財務面への影響を抑えるためにパンデミック初期に支出を削減している。これが人材採用やIT投資をはじめ複数の事業運営に影響を及ぼした。

 パンデミックでD&Iの取り組みにマイナス影響があったと答えた回答者のうち、38%は「女性が最も大きな影響を受けた」と答えた。一般的に女性は育児の大半を担っていたり、接客業のようにパンデミックの影響を強く受けた業種で働いていたりするためだ。

 調査レポートによると、回答者の20%が「オフィスワーカーとテレワーカーの双方に対してインクルージョンを保証すること」が2022年の優先事項だと答えている。オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが主流になりつつある時代において、D&Iは以前よりも重要な取り組みになる。この取り組みの一例には、従業員の勤務形態に関係なく昇進の機会を均等に提供するといった施策がある。

 D&Iの目標を設定している企業に属する回答者の64%が、「2023年までに目標を達成したい」と答えた。一方でその3分の1は目標達成のための準備が整っているかどうかを疑問視しており、目標達成にはさらなる投資が必要であることが伺える。

 17%の回答者は、D&I推進にITを活用することを考えている。同様に回答者の89%は「D&I施策の進捗(しんちょく)状況の管理にITを活用するとより目標を達成しやすい」と答えた。回答者の29%は「企業はD&Iに対して『デジタルファースト』のアプローチを取るべきだ」と回答。44%は「D&Iの推進に役立つ革新的な技術の利用が『重要』」だと考えている。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 AJS株式会社

紙やExcelの運用から脱却し人事評価業務を効率化、事例に学ぶ人事制度の改善術

紙やExcelを用いた人事評価業務では、進捗管理やデータ集計に多大な労力がかかってしまう。そこで本資料では、評価ツールを導入することで、評価に関わるさまざまな作業を効率化することに成功した事例を紹介する。

市場調査・トレンド 株式会社マネーフォワード

「36協定」の締結/更新ガイド:基礎知識から手順、注意点まで社労士が解説

2019年4月から時間外労働の上限規制が労働基準法に規定され、特別条項付きの36協定を締結した場合でも厳守しなければならない、時間外労働の限度が定められた。本資料では、36協定における基礎知識から締結時の注意点まで詳しく解説する。

製品資料 株式会社マネーフォワード

社労士が解説、従業員の離職につながる「6つの原因」と防止メソッド

人手不足が深刻化する近年、新規採用や従業員教育にコストをかける企業が増えているが、その分離職時のダメージも大きく、事業継続に影響が出るリスクもある。そこで、主な離職要因となる6つの問題について、その原因や解決策を解説する。

製品資料 株式会社マネーフォワード

社労士が解説する休日と休暇の基本ルール、よくあるトラブルを未然に防ぐヒント

休日と休暇の管理は労務管理の中でも重要な業務だ。しかし、振替休日と代休の違いを理解していない、有給休暇取得を適切に管理できていないといったケースから、従業員とのトラブルに発展することもある。このような事態を防ぐには?

製品資料 株式会社マネーフォワード

雇用保険法の改正で何がどう変わる? 社労士に聞く実務対応のポイント

2025年4月以降に施行される雇用保険法の改正により、高年齢雇用継続給付や、自己都合離職者への給付制限などが見直され、企業の人事/労務対応が大きく変わろうとしている。改正内容の詳細や実務対応のポイントを、社労士が解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...