ダイバーシティーの取り組みが注目を集める中で、その実践に課題を抱える業界や企業がある。調査によると非上場FinTech企業における経営幹部への女性登用が進んでいない。その実態は。
非上場FinTech(金融とITの融合)企業の調査を手掛けるFindexableは2021年11月、FinTech企業における女性活躍に関するレポート「Diversity for Growth」の2021年版を発表した。同レポートによれば、世界の非上場FinTech企業では上級役員や技術担当役員などの経営幹部への女性登用は進んでいない。
Diversity for Growthは、FinTech企業における女性活躍に関するデータを集約し、提供するサービス「Fintech Diversity Radar」のデータをまとめたレポートだ。調査対象企業は資金調達額が多い世界の非上場FinTech企業1032社だ。同レポートによると、調査対象企業のうち、女性だけで設立した企業はわずか16社だった。調査対象企業に投資されたベンチャーキャピタル資金のうち、この16社が獲得した割合は1%にすぎない。
Diversity for Growthによると、調査対象企業の最高経営責任者(CEO)に占める女性の割合は7%にとどまった。最高情報責任者(CIO)や最高技術責任者(CTO)といった主要な技術担当役員に占める女性の割合はさらに低い(4%)。同レポートは、これらのFinTech企業の創業者、CEO、上級役員、取締役、いずれの役職においても女性の影が薄いと説明する。
FinTech企業で女性は、人事やマーケティングの仕事に携わる傾向があることも分かった。一方で戦略、事業開発、技術担当の幹部に就いている女性はほとんどいない。「上級技術職の女性はごくわずかしかいない」と、Diversity for Growthは述べる。
Diversity for Growthは、白人男性がベンチャーキャピタル投資の93%を管理していると指摘する。FinTech企業は金融業界の慣行に従っているようだが、「これではビジネスチャンスを逃す」と同レポートは警告する。
明るい材料もある。創業者に1人以上の女性が含まれるFinTech企業の割合が、年々増加していることだ。Diversity for Growthによると、主要FinTech企業において女性が創業に参加した割合は2010年には6%未満だった。この割合は2019年には約20%に、2020年には30%に増加した。
金融大手のBarclaysとMorgan Stanleyは、多様性を重視したFinTech拠点を英国に設ける。それぞれ2021年9月と10月に発表した。こうした背景から英国のFinTech業界では、女性活躍に関する状況が好転するとの期待が高まっている。だが変革の障害は根深い。
金取引FinTechサービスを運営するGoldex Technologiesのシルビア・カラスコCEOは、「女性の起業は男性より多くの障壁に直面する」と指摘する。ただし、それは「FinTech業界に限ったことではない」と言い添える。
金融業界の関係者が女性に対して、高等学校や大学を卒業する時点で業界への勧誘をしても「手遅れだ」とカラスコ氏は話す。こうした時点でアプローチをしても、応えてくれるのは「ごく少数派」(同氏)だ。女性採用の裾野を広げるためには、子どものころから学校や家庭で、男女の雇用機会均等の考え方を刷り込む必要があると同氏は説明する。
FinTech企業Taniaを創業したマリア・スコット氏は、女性の活躍を阻む状況を改善するためには多くのことに取り組まなければならなかったと話す。だが、女性活躍に関する問題への意識は高まっていると語る。
スコット氏は「今、重要なことは、女性の活躍を後押しする機運を逃さないことだ」と話す。FinTech企業は女性活躍に関する取り組みを継続し、支援体制の整備や啓発の推進、新たな機会の創出など、さまざまな面からチャレンジを進めていく必要があると、同氏は指摘する。
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