英国は高速通信を国内に行き渡らせるために、水道管を使って光ファイバーを敷設することを計画している。一見変わったこの計画を打ち出した英国が抱える事情とは。
英国政府はブロードバンド(広い帯域幅によるデータ通信)と携帯電話サービスの提供エリアを拡大するインフラ戦略を打ち出している。2025年までに英国国民の85%が「ギガビット」級のインターネット接続を利用可能にする、という具体的な目標を設定している。そのために英国が採用を検討しているのが、水道管を使って光ファイバーを敷設することだ。以前から似た議論は何度も登場している。この取り組みは成功するのだろうか。
固定ブロードバンド事業者と携帯電話事業者は英国で、ギガビット級のブロードバンドサービスに注力している。携帯電話事業者は「5G」(第5世代移動通信システム)の普及にも着手している。しかし十分に通信サービスが行き渡っていないことも事実だ。
通信事業者と英国政府は、都市から離れた地域にも「4G」(第4世代移動通信システム)を行き届かせる「農村共用ネットワーク」(SRN)の構築を進めている。これは、英国の農村地域では高速な通信サービスを利用できないという事実を反映している。英国では約20万戸もの世帯が、10Mbpsに満たないデータ伝送速度の通信サービスを利用している。英国情報通信庁(Ofcom)によれば、「高速通信」は10Mbps以上を指す。
この状況を改善するため、英国政府は光ファイバーを敷設するコスト効率の高い方法を探している。道路や農地を掘り起こし、新しい配管や電柱を設置するには多額の土木工事コストがかかる。英国政府は、その土木工事コストがブロードバンドを普及させる事業全体の5分の4を占める可能性があると試算している。
SRNの事業で、英国は光ファイバーの敷設だけではなく、水道管の水漏れを抑止する対策も講じる。英国における水漏れの量は、水道の全供給量の20%にも上る。この対策として、英国政府はインターネットに接続するセンサーを配水管に設置する工事を視野に入れている。センサーを設置することで、水道会社は水漏れの箇所を特定して配水管を修理可能になる。
英国でデジタルインフラ大臣を務めるマット・ワーマン氏は、農村地域にブロードバンドを提供する際の最大の障害は、道路や農地の掘り起こしにかかるコストだと指摘している。そこで英国政府は、英国国内に既に行き届いている水道管を使って、ブロードバンドの提供と水漏れ抑止という2つの目標を同時に達成しようとしている。
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