英国AmazonがVisaクレカの取り扱いを停止、理由は「手数料が高過ぎる」一般消費者への影響は「ほとんどない」?

英国のAmazon.co.ukでは2022年1月19日から、英国発行のVisaクレジットカードが利用できなくなる。Visaはこの決定を批判するが、アナリストは「一般消費者への影響は少ない」とみる。その理由は。

2021年12月14日 05時00分 公開
[Karl FlindersTechTarget]

関連キーワード

Amazon | eコマース


 Amazon.com(以下、Amazon)の英国サイト「Amazon.co.uk」は、英国で発行された「Visa」ブランドのクレジットカード支払いの取り扱いを2022年1月19日(現地時間)に停止する。この方針変更は、Visaブランドのデビットカードの利用には影響しない。クレジットカード決済で過大な取引コストがかかっているという認識から、この変更方針に至ったとみられる。理想を言えばクレジットカード決済の取引コストは下がるのが望ましいが、現実の取引コストは上昇し続けているという。

 顧客に対してAmazon.co.ukが送った案内メッセージの中には、次のような一文が記載されていた。

残念ながら2022年1月19日から、英国で発行されたVisaクレジットカードはご利用いただけなくなります。Visaがクレジットカード取引の処理に高額な手数料を課しているためです。お客さまは引き続きデビットカード(Visaデビットカードを含む)と、Mastercard、Amex、EurocardといったVisa以外のクレジットカードをお買い物にご利用いただけます

「Visaは手数料が高過ぎる」と英国Amazon、その判断を批判するVisa

会員登録(無料)が必要です

 Amazon.co.ukは案内メッセージで顧客に、サブスクリプションサービス「Amazon Prime」(Amazonプライム)など、同社のあらゆるサービスへの支払い方法を更新するよう求めた。これに対してVisaは失望の意を表明し「Amazon.co.ukは消費者の将来の選択肢を制限しようとしている」と非難した。

 Visaの広報によると、英国の買い物客は現在とホリデーシーズン(11月下旬の感謝祭から1月初旬までの時期)を通じて、VisaのデビットカードとクレジットカードをAmazon.co.ukで使える。「われわれはAmazon.co.ukと長期的な関係を築いている」とVisa広報は主張。「Visaのカード利用者が2022年1月以降もAmazonに制限されることなく、自分の好きなVisaクレジットカードをAmazon.co.ukで使えるように、引き続き問題解決に取り組む」と意気込む。

 調査会社Bloor Research Internationalのチーフアナリストであるデビッド・バニスター氏は、Amazon.co.ukからのメッセージを受け取ったときは「驚いて、てっきり詐欺メールかと思った」と語る。ただし「小売業者がコストを理由に、特定のカードによる支払いを拒否するのは、それほど珍しくない」という見解だ。

 コンサルティング会社Celentの金融サービスアナリストであるガレス・ロッジ氏も、このニュースに「驚いた」と語る。小売業者(大抵は小規模な業者)が特定のクレジットカードを扱わないのはよくあることだが「世界最大級の小売業者が、クレジットカード決済市場で高いシェアを誇るカードの支払いを受け付けなくなるのは、非常に驚きだ」とロッジ氏は指摘する。

 金融情報サイト「Family Money」を運営するRigstone Capitalのパーソナルファイナンス専門家、ピーター・キンプトン氏は「Visaクレジットカードの取引手数料は高いので、Amazon.co.ukが使用を停止することに不思議はない」と語る。Amazon.co.ukは市場のリーダーだが、オンラインショッピングのライバル企業や、小規模企業に対する競争力を維持する必要があるからだ。「人々は小規模企業を積極的に支援しようとしている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)後は、その動きはさらに広がる」(キンプトン氏)

 Amazon.co.ukはできるだけ安い価格を商品に設定し、それでも利益を出せるようにする必要がある。そのため「まず取引手数料を抑えようとするのは理にかなっている」とキンプトン氏は考えている。

 Visaは「Amazon.co.ukは消費者の選択肢を制限しようとしている」と批判しているが、キンプトン氏は「これは特に問題にならない」と考えている。一般消費者は複数のクレジットカードや複数のデビットカードを持っていることが珍しくないからだ。「この変更のせいでAmazon.co.ukが売り上げを落とすことはないと考えられる。他の大手小売業者が追随する可能性すらある」とキンプトン氏は予想する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製

品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

7つのユースケースで探る、リスク/コンプライアンス管理の課題と解決策

企業がビジネス規模を拡大し、サプライチェーンやビジネスパートナーとの協業が進んだことで従来型のリスク/コンプライアンス管理の限界が露呈しつつある。リスク管理を次のステップに進めるためには、これまでと異なる仕組みが必要だ。

事例 ServiceNow Japan合同会社

1年で顧客離脱率が20%低下、Lenovoは自社サービスの価値をどう高めたのか?

Lenovoでは、顧客デバイスのライフサイクル管理を支援するDevice as a Serviceを世界中に提供している。しかし、そのオペレーションは複雑であり、顧客エクスペリエンスを高めるために改善が必要だった。同社が採った改善策とは。

製品資料 LRM株式会社

“惰性”から脱却して効果を上げる、年間を通じたセキュリティ教育計画の立て方

セキュリティリスクが増大している今日において、社内のセキュリティ教育は必須のタスクとなっている。しかし、セキュリティ教育それ自体が目的化してしまい、確実な効果を上げられていないケースも多い。

製品資料 LRM株式会社

進化するサイバー攻撃に対応、セキュリティ教育を見直すための3つのポイント

日々進化するサイバー攻撃から自社を守るためにも、時代の変化やトレンドに応じてセキュリティ教育を見直すことが必要だ。その実践ポイントを「目的の再確認」「教育の実施状況の分析」「理解度・定着度の測定」の3つの視点で解説する。

製品資料 株式会社ブレインパッド

DX推進を見据えた「データ活用人材」を社内で育てるための効果的な方法とは?

データ活用人材を社内で育成するためには、「DX推進者」や「分析実務者」などの役割に応じたスキル定着が欠かせない。効果的な育成を行う方法として、あるデータ活用人材育成サービスを取り上げ、その特徴や事例を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。