「オープンバンキング」による決済が、今後急速に普及する可能性がある。この勢いは「クレジットカード決済の優位性を失わせる」と調査会社は予想する。決済はどう変わろうとしているのか。
金融機関が持つデータを外部企業が利用できる「オープンバンキング」の仕組みを使った決済は、クレジットカード決済の優位性に終止符を打つ可能性がある。欧州がその先導役となりそうだ。
調査会社Juniper Researchの調査によると、オープンバンキング決済の世界市場規模は、2026年までに1160億ドルに達する見通しだ。これは、金融業界でオープンバンキング決済の導入が急速に進むことを示している。Juniper Researchは、オープンバンキング決済の2021年の世界市場規模が40億ドルにとどまると予想しているからだ。
オープンバンキング決済が2026年までに急成長するためには、ユーザーの認知度向上が重要になる。欧州がこの流れを先導し、2026年にはオープンバンキング決済額全体の75%を占めるとみられる。
欧州のオープンバンキングサービスは、2018年に施行した欧州連合(EU)の決済サービス指令第2版(PSD2:Payment Services Directive 2)によって可能になった。銀行の顧客の同意があれば、サードパーティーベンダーがAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)経由で銀行が保有する顧客データにアクセスし、その情報を使ってサービスを提供できる。一般企業がこうしたAPIを利用すれば、自社のWebサイト内で、顧客が自分の口座から直接決済できるサービスを提供することも可能になる。英国には、PSD2と同様のオープンバンキング制度がある。
調査レポートの共著者であるJuniper Researchのダムラ・サット氏は「EUのPSD2は素晴らしい出発点だが、オープンバンキングの最終目標ではない」と強調する。PSD2は「もっと大きなイノベーションを生むための基盤でなければならない」とサット氏は主張。「ベンダーはオープンファイナンスの未来に向けて、魅力的な機能の開発にしのぎを削っている」と語る。
Juniper Researchは、APIを提供する事業者が規制上の最低要件を超えて「認知度の高まりとともに、融資やクレジットカード、住宅ローンを集約した新商品のような、高度な活用事例を生み出すことが望ましい」と考えている。
英国の銀行は、競争市場庁(CMA:Competition & Markets Authority)のオープンバンキング制度(PSD2を踏まえたもの)に応じた取り組みをするよう要求されてきた。英国のオープンバンキング実施機構(OBIE:Open Banking Implementation Entity)が2021年1月に公開した調査レポートによると、英国におけるオープンバンキング決済件数は2018年に32万件だったのが、2020年には400万件以上になった。2018年には英国内のサーバへのAPI呼び出しが6680万件実行されたのに対し、2020年にはこの件数も70億件以上になった。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業がビジネス規模を拡大し、サプライチェーンやビジネスパートナーとの協業が進んだことで従来型のリスク/コンプライアンス管理の限界が露呈しつつある。リスク管理を次のステップに進めるためには、これまでと異なる仕組みが必要だ。
Lenovoでは、顧客デバイスのライフサイクル管理を支援するDevice as a Serviceを世界中に提供している。しかし、そのオペレーションは複雑であり、顧客エクスペリエンスを高めるために改善が必要だった。同社が採った改善策とは。
セキュリティリスクが増大している今日において、社内のセキュリティ教育は必須のタスクとなっている。しかし、セキュリティ教育それ自体が目的化してしまい、確実な効果を上げられていないケースも多い。
日々進化するサイバー攻撃から自社を守るためにも、時代の変化やトレンドに応じてセキュリティ教育を見直すことが必要だ。その実践ポイントを「目的の再確認」「教育の実施状況の分析」「理解度・定着度の測定」の3つの視点で解説する。
データ活用人材を社内で育成するためには、「DX推進者」や「分析実務者」などの役割に応じたスキル定着が欠かせない。効果的な育成を行う方法として、あるデータ活用人材育成サービスを取り上げ、その特徴や事例を紹介する。
2025年の「IT導入補助金」で中堅・中小が導入すべき2つのツール (2025/3/31)
申請業務のシステム化が難しい理由とその解決策とは (2024/9/27)
運用・管理はお任せ 生成AIを安全に活用できるRPAプラットフォーム (2024/5/16)
オンライン研修で情報処理安全確保支援士の取得と維持を支援 (2024/2/1)
セキュリティ対策にDX 情シスが「やりたくてもできない」状況から脱するには? (2024/1/29)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。