Workday米国本社は従業員のダイバーシティーに取り組んでいるが「一企業の取り組みだけでは雇用は増えない」と事態を冷ややかに見る専門家もいる。シリコンバレーのIT企業の、人種的公平性に関する動向を探る。
前編「人事システムベンダーだからこその『自己批判』、Workdayが取り組むダイバーシティー」は、クラウド型人事(HR)システムを提供するWorkdayの従業員人種比率の偏りと、その解消に向けた取り組みについて紹介した。一方で専門家は「一企業の取り組みだけでは雇用は増えない」と指摘する。後編はシリコンバレー企業に長年横たわる人種比率の問題を取り上げ、Workdayのデータに加え、Oracleの状況も紹介する。
Workdayの社内調査レポート「Global Impact Report」における2019年度のデータでは、米国で働く黒人従業員の比率が2.4%となっていた。しかし同社は、2021年7月に公開した2021年度のデータでこの数値を2.2%に修正している。この比率は従業員を対象としたアンケートに基づいて算出されたものだ。
2019年度の黒人従業員比率を、Workdayが2.4%から2.2%に修正した理由は不明だ。同社は「従業員のデータをあらためて見直し、分析の質を高める方法を見つけた」と説明する。
2021年度の調査では「(人種に対する従業員アンケートへの)回答を拒否」という項目が新たに追加されている。「回答を拒否」という選択肢は以前のGlobal Impact Reportにもあった。だが以前は、回答結果の数値は含まれていなかった。「Global Impact Reportをさらに進化させるために、2021年度の調査でこの指標を追加した」とWorkdayでダイバーシティーに関する取り組みの最高責任者を務めるカリン・テイラー氏は語る。「回答を拒否」の比率はごくわずかのままずっと横ばいで推移しているという。
Workdayの米国本社があるカリフォルニア州シリコンバレーは、ハイテク企業の黒人比率とジェンダーの多様性に関する問題を長年抱えている。マサチューセッツ大学(the University of Massachusetts、以下UMass)アマースト校のCenter for Employment Equity(雇用均等センター)が2018年に実施した調査では、シリコンバレーの企業に雇用されているアフリカ系米国人の従業員数はわずか4.4%だった。
人事ソフトウェア市場でWorkdayとしのぎを削っているOracleもUMass調査が示す水準を下回っている。Oracleが公開した2021年度の米国従業員の人種比率によれば、白人58%、アジア系29.1%、ヒスパニック系6.3%、黒人3.7%、ハーフやクオーターなど2.4%、太平洋諸島民0.3%、ネイティブアメリカン0.2%だった。
Workdayは「VIBE」(Value Inclusion, Belonging and Equity)というスローガンを掲げ、職場とコミュニティーの人種的な公平性を実現するために「2023年までに米国において黒人従業員とラテン系従業員の全体構成を30%増やす」という目標を立てている。しかしUMass雇用均等センターの責任者を務めるドナルド・トマスコビッチ・デヴィー氏は「Workdayの黒人雇用人数の増加率は、それほど大きくならない可能性がある」と指摘する。
「米国人従業員が5000人程度いる企業ならば、従業員の新規雇用数はたったの20人程度だ。シリコンバレーで黒人従業員が少ない企業という立場を変えるには、やるべきことが他にもたくさんあるのは明らかだ」とデヴィー氏は語る。
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