米国企業が次々とDEI関連のポリシーを変更する中、マクドナルド、ウォルマートなどの企業は「DEI」という用語の使用を避け、別の道を模索し始めている。これらの動きは企業の本質的な方向転換と言えるのか。
2025年に入り、Amazon.com、Google、Meta Platformsといった米国のIT大手がDEI(ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン:多様性、公平性、包摂性)政策の見直しを進めている。その波は広がっており、McDonald's(マクドナルド)、Target、Walmart(ウォルマート)といった主要企業がDEI政策の大幅な変更を発表した。それぞれどのような主張の下で方針転換を果たしたのか。
2025年1月、ファストフード大手マクドナルドは従業員、取引先、フランチャイズオーナー向けの声明において、2024年の成果と2025年の変更点を発表した。主な変更点は次の通りだ。
大手スーパーマーケットチェーンTargetがDEIポリシーを強化する原動力となったのは、同社が本社を置く米ミネアポリスで2020年にジョージ・フロイド氏が亡くなったことだった。この事件は、黒人男性であるフロイド氏が白人警官に取り押さえられた際に窒息死したもので、「Black Lives Matter」運動の引き金になった。企業に対して社会的不平等の解消を求める声が上がる中、同社は黒人従業員の割合を20%増やす目標を同年に発表した。
そうした姿勢を見せていたTargetがダイバーシティーへの取組方針を転換させたのは2025年1月のことだ。同社の声明には「ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョンの3カ年目標を終了させ、ダイバーシティーに関する全ての外部調査を停止する」との記載がある。この声明において、同社は次の変更点を強調している。
これらの変更は「外部状況の進化に適応するため」だとTargetは説明する。
2024年11月、スーパーマーケットチェーン大手ウォルマートは以下をはじめとする複数のDEIに関する取り組みを終了させることを明らかにした。
ウォルマートもマクドナルドと同様にDEIという表現を変更しており、代わりに「belonging」(ビロンギング、帰属意識)という表現を使っている。この事実を最初に指摘したのは政治活動家ロビー・スターバック氏だ。ウォルマートはその後、Associated Press(AP通信)やABC Newsなど、複数の報道機関に対してスターバック氏が指摘した事実を正式に認めた。その他にも、同社は最高ダイバーシティー責任者という役職名を、最高ビロンギング責任者に変更した。
複数の米国企業がDEIの取り組みを縮小させる中、DEIを支持し続けると宣言する企業もある。2025年1月、会員制小売チェーンCostco Wholesale(コストコ)の株主はDEI施策のリスクと効果を評価する提案に反対票を投じた。
Appleの株主も、同様の提案に反対票を投じた。同社はこの提案を却下し、「ビロンギング文化を育み、誰もが自身の力を最大限に発揮できるように尽力する」との意見を示している。
MicrosoftもDEIの取り組みを推進している。同社で最高ダイバーシティー責任者を務めるリンジー・レイ・マッキンタイア氏は、ビジネス向けSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「LinkedIn」にこう投稿した。「Microsoftにとって、透明性と説明責任は一時的なトレンドや季節によって変わるものではない」
Delta Air Lines(デルタ航空)で最高法務責任者を務めるピーター・カーター氏は、2024年第4四半期(10~12月)の業績発表において、「デルタ航空は他社に続いてダイバーシティーに対する立ち位置を見直すのか」と問われた。カーター氏は方針の見直しを否定し、「ダイバーシティーへの取り組みは当社のビジネスに重要だと考えているため、揺らぐことはない」と回答した。
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
給与計算や保険料納付、年末調整など年間を通して多岐にわたる業務が存在する人事労務。本資料ではその年間業務を月別にまとめ、提出や納付が必要な手続きとともに、法改正や実務対応におけるポイントについて分かりやすく解説する。
毎月の給与計算や年末調整をスムーズに遂行するには、所得税の仕組みや計算方法に関する知識が不可欠だ。そこで、給与所得の計算方法から所得税計算の流れ、源泉徴収と年末調整の仕組みなど、人事労務に役立つ基礎知識をまとめて紹介する。
毎年多くの法改正が施行される人事・労務関連法。2025年4月には、育児・介護休業法の改正が多く予定されており、さまざまな対応が必要になる。そこで、育児・介護休業法の改正内容や施行スケジュール、実務対応のポイントなどを解説する。
2019年4月から時間外労働の上限規制が労働基準法に規定され、特別条項付きの36協定を締結した場合でも厳守しなければならない、時間外労働の限度が定められた。本資料では、36協定における基礎知識から締結時の注意点まで詳しく解説する。
人手不足が深刻化する近年、新規採用や従業員教育にコストをかける企業が増えているが、その分離職時のダメージも大きく、事業継続に影響が出るリスクもある。そこで、主な離職要因となる6つの問題について、その原因や解決策を解説する。
制度変更で取引先が数千件増える? 3カ月でシステム構築できた事例 (2025/3/25)
人事管理システムの選び方 失敗しないポイントは? (2024/9/18)
人材開発って何? 人材育成との違いは? 効果的な方法を知る (2024/9/18)
デジタル人材を育成したい 実践できるポイントは? (2024/9/18)
「2030年問題」が目の前に! 企業がとるべき対策を学ぶ (2024/9/18)
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...
「政府」「メディア」への信頼度は日本が最低 どうしてこうなった?
「信頼」に関する年次消費者意識調査の結果から、日本においても社会的な不満・憤りが大...
「Threads」が広告表示テスト開始 企業アカウント運用のポイントとは?
Metaのテキスト共有アプリ「Threads」で広告表示のテストが開始され、新たな顧客接点とし...