パンデミックの影響で企業のIT活用やテレワークが拡大し、結果としてD&Iの取り組みが進んでいる。調査レポートを基に、英国における「雇用の多様性」の問題を考察する。
Intelは2021年9月、ダイバーシティー&インクルージョン(D&I:人材の多様性を広げ、それを受容する文化を形成すること)に関する調査を実施した。調査レポート「The Future of Inclusion in an Evolving Workplace」によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響でITツールの活用やテレワーク導入が進み、結果的としてD&I施策が進む傾向にあった。
調査対象は英国や米国、インドなど17カ国の企業で働く意思決定者または、DEI(Diversity, Equity and Inclusion:多様性、公平性、包括性)ポリシーの策定に影響力のある従業員3136人。回答者が所属する企業の規模は従業員100人以上。調査は、Intelが調査会社Sapio Researchに委託し、オンラインで実施した。
調査結果を受け、Intel英国法人のカントリーマネジャーであるトリシュ・ブロムフィールド氏は「D&I推進の観点で、対象企業の63%にとってはCOVID-19による影響がプラスに働いた」と話す。感染症対策としてテレワークを導入する企業が拡大したことで、より個人の都合や希望をかなえる、融通の利く働き方ができるようになったためだ。
ブロムフィールド氏によると、Intelが2021年初頭に同社の従業員を対象に実施した調査では、回答者の90%が「どちらかといえばオフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークがよい」と回答した。この結果から同氏は「多くの従業員にとって、ハイブリッドワークは有益だ」と考えている。
英国のIT業界におけるダイバーシティーの欠如は、継続して議論の対象となっている。英国コンピュータ協会(BCS:British Computer Society)が2020年6月に発表したレポート「BCS DIVERSITY REPORT 2020:ONS ANALYSIS」によると、英国のITスペシャリストのうち女性は約17%だった。人種別では、インド系が約8%、黒人(アフリカ系やカリブ海系英国人を含む)は2%、パキスタン、バングラデシュ系は2%だった。
一般的にIT業界におけるこうしたダイバーシティーの欠如は、企業の包括性の欠如に起因すると考えられる。「経営幹部や人事部門は、ハイブリッドワークを確実に包括的なものにするために自社のD&Iに関する慣行を見直し、目的にかなった取り組みになるよう徹底する必要がある」とブロムフィールド氏は指摘し、いま実施しているD&Iの取り組みを強化または変更すべきかどうかを再検討することを促す。
前述のIntel調査で、パンデミックの影響で自社のD&Iが進んだと答えた回答者の46%は、テレワークやハイブリッドワークによって、「過小評価グループ」(注2)から有能な人材を採用しやすくなったと回答した。
※注2:ある集団の中において人数が少ない属性(人種や性別など)を持つ人々のこと。
ITの「スキル格差」が広がり、若者が職を求めている中で、ハイブリッドワークの促進は、IT業界に多様な人材を引き付けて定着させる機会になる可能性がある――。ブロムフィールド氏はこのように期待を寄せる。
「Intelは、従業員にハイブリッドワークを提案できる幸運な立場にある」とブロムフィールド氏は話す。同氏は、過小評価グループに属する人材、融通の利く勤務形態で働きたい女性、小さな子どもを持つ親にとってハイブリッドワークは魅力的な働き方だと考える。「ハイブリッドワークが多様な人材をIT業界に引き付けていることはデータからも明らかだ。この流れは恐らく、われわれにとってチャンスだ」(同氏)
長期的に見るとハイブリッドワークの導入拡大は、若者をSTEM(科学、技術、工学、数学)分野へと引き付ける機会になるとブロムナード氏は指摘する。同氏は、「IT業界は、より現代的で、融通の利くダイナミックな働き方を提供している」と自信を見せる。
一方で、パンデミックがD&I推進に悪影響を及ぼしたと認識している企業も一定数存在する。後編もIntelの調査データに基づき、IT業界におけるD&Iの現状と将来展望について考察する。
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