英国ウルバーハンプトン市は、健康的な行動に対して報酬が発生するスマートフォンアプリケーションを試験運用している。地域住民の食生活改善と運動促進の支援を目指す、その取り組みの背景とは。
英国ウルバーハンプトン市は、健康増進につながる行動をすると報酬が得られるスマートフォンアプリケーションの試験運用を開始した。市民の食生活改善と運動促進を目的としたこのアプリケーションは、医療ITベンダーHeadUp Globalが技術提供している。同市の成人住民であれば誰でも、Webサイトを通じてトライアルへの参加申し込みができる。トライアルは2022年初頭から開始し、6カ月間実施する。
ウルバーハンプトン市はトライアルの参加者に、手首に装着するデバイスと、専用アプリケーションのアクセス権を付与する。このアプリケーションは「歩数を増やすように」「もっと果物や野菜を取るように」など、一人一人のユーザーの健康状態に合った注意事項をデバイスに示す。
健康的な行動を取れば、トライアル参加者はポイントを集めることができ、これを報酬と交換することができる。報酬には映画館やテーマパークのチケット割引の他、衣服や食品のクーポンなどがある。このインセンティブ提供に当たって、試験運用プロジェクトは英国保健省から約300万ポンドの資金援助を受けている。
「このプロジェクトは、政府がどのように人々のライフスタイルを健康的なものに変えることができるかを知る機会だ」。英国保健・社会ケア大臣サジド・ジャビド氏はこう述べ、ウルバーハンプトン市民にトライアル参加を促している。「参加してもらえれば、報酬の存在がどのように健康へのモチベーションを高め、生活習慣を少し変えることがどれほど持続的な健康改善につながるかを、さらに理解できる」とジャビド氏は付け加える。
英国政府の健康体重戦略の一環となるこの新プロジェクトは、身体の健康を向上させ、健康状態の悪化を防ぐためにデジタル技術を利用する「健康増進・医療格差対策室」(OHID:Office for Health Improvement and Disparities)が推進する取り組みだ。OHIDが試験運用の開催地としてウルバーハンプトン市を選んだのは、人口規模が大きく、住民の3分の1が「運動不足」と見なされたことが挙げられる。さらに同市は、1日に果物や野菜を5皿分以上食べる成人の数が平均を下回っていた。
後編は、政府がこのような市民向け健康増進アプリケーションを提供することの狙いと、市民の懸念について解説する。
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