製造業は「5G」のネットワークを活用して製造工程の最適化に力を入れている。この動きは今後、他業種にも拡大する可能性がある。VolkswagenとJohn Deereの事例を踏まえ、最新の動向を追う。
「5G」(第5世代移動通信システム)によって進んでいるスマート工場の進化。Ford MotorとMercedes-Benzを取り上げた第3回「フォードやメルセデス・ベンツに学ぶ『製造工程を最適化させる方法』」に続き、第4回となる本稿はVolkswagenとJohn Deereの取り組みを紹介する。
工場間でデータを収集して共有する点において、Volkswagenの5Gネットワークの設計は第3回で取り上げたMercedes-Benzのシステムと似ている。異なるのは、Volkswagenが産業用クラウドサービスを使用していることだ。
VolkswagenのWAN設計は、施設間で大容量の分析用データを転送して各施設の製造工程の改善に生かすために最適化している。そのために5Gのネットワークスライシング(ネットワークを仮想的に分割する技術)を使用している。同社は5Gネットワークで接続するスマート工場を、2021年時点の20カ所から2025年に133カ所まで増やすという。
スマート工場の運用に関して、VolkswagenはAmazon Web Services(AWS)と協力し、独自のデジタル製造現場管理ツール「Digital Shop Floor Management」を開発した。これにより、Volkswagenのスマート工場で稼働している機械のデータをセンサーが収集し、管理用のダッシュボードに表示することが可能になった。管理者がそのデータを見てすぐに行動を起こせるようにしている。
調査を専門とする非営利団体Economic Strategy Instituteの上級研究員、ロバート・コーエン氏は「スマート工場で自前の5Gネットワークを構築している企業もある」と指摘する。例えば、農業機械メーカーのJohn Deereは2020年に米連邦通信委員会(FCC)のオークションで5Gの周波数帯を購入。その周波数帯を使用して、米国中西部の数カ所の工場を5Gネットワークで相互に接続し、各工場で機械がどのように使用されているのかを分析している。
5Gネットワークを導入するスマート工場は、システムの自律性、拡張性、セキュリティの3つの向上を追求している。コーエン氏によると、「6G」(第6世代移動通信システム)が使えるようになれば、スマート工場のネットワークが処理できるデータ容量は大幅に増える。それとともに、遅延をさらに短く抑えることも可能になる。「将来、センサーやネットワークの活用は製造業にとどまらず、サービス業など他分野の “スマート化”も促すだろう」とコーエン氏は予測する。
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