ドイツの大学が「テープ」でデータを永久保存 長年蓄積したノウハウとは?データの永久保存方法【後編】

データを永久保存するには、長年にわたって適切にデータを扱わなければならない。貴重なデータを豊富に抱えるゲッティンゲン大学は、どのような方法を採用しているのか。

2022年02月03日 05時00分 公開
[Paul CrocettiTechTarget]

関連キーワード

データ | ストレージ


 データの「永久保存」にはどのような方法が求められるのか。ドイツのゲッティンゲン大学(Georg-August-Universität Göttingen)の情報処理センターGWDG(Gesellschaft für wissenschaftliche Datenverarbeitung mbH Göttingen)が、永久保存しているデータについては前編「データを『永久保存』する方法 ドイツの大学が持つ歴史的に貴重なデータとは?」で説明した。本編は同機関が採用する永久保存のより具体的な方法を紹介する。

ゲッティンゲン大学がデータを永久保存する方法とは?

会員登録(無料)が必要です

 GWDGはテープでデータを永久保存している。ただしテープはHDDよりもデータへのアクセス時間が長くかかるため、頻繁に利用するデータ用にHDDも併用している。ゲッティンゲン大学の教授でCIO(最高技術責任者)のラミン・ヤヒヤプール氏は「アーカイブするデータの大半はほとんど使用しない。データ管理のポリシーが重要だ」と話す。

 データを長期にわたって保存する場合、さまざまな課題がある。ヤヒヤプール氏によれば、GWDGは数十年にわたるデータ管理の中で、アーカイブの仕組みを何度も見直し、その都度データ移行が必要になった。GWDGは過去15年ほどQuantumのストレージを使用しており、この間にもテープライブラリを更改した。ヤヒヤプール氏によれば、テープカートリッジの寿命は20~30年なのに対し、テープを管理する技術は8~10年で古くなる。データ移行には2年かかることもあるという。同氏は「いつでも次のデータ移行を頭において動かなければならない」と話す。

 ファイル形式もデータの長期保存において考慮しなければならない点だという。バージョンアップの一環として、データ保存時の標準ファイル形式を変更するアプリケーションは珍しくない。中には最新バージョンだと、過去のファイル形式のデータを正しく読み出せないアプリケーションもある。そこで役に立つのが、新旧のファイル形式を管理するツールだ。ヤヒヤプール氏によれば、GWDGはデータを損失させることなくデータの長期保存に成功している。「非常に手間のかかる作業だが、それだけの価値はある」と同氏は言う。

永久保存の必需品とは?

 Quantumのプロダクトマーケティング担当シニアディレクターのエリック・ベシア氏によると、データの永久保存を特に必要としているのは研究機関やエンターテインメント系のメディア企業などだ。エンターテインメント業界なら、映画やスポーツのオリジナル版の映像を残したいと考える可能性がある。

 ベシア氏によると、オブジェクトストレージはデータの検索とアクセスが容易になるので、永久保存のアーカイブになくてはならない技術だという。テープも重要な役割を果たしている。テープは他の記録メディアに比べて容量単価が安く、電力消費が少なく済む上、寿命も比較的長い。

 データを永久保存する際は、データの保管場所を把握し、次の世代のストレージに引き継ぐための複製を作成するソフトウェアも重要になるとベシア氏は述べる。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品レビュー グーグル合同会社

重要なエンドポイントを守る、Chromeブラウザを企業向けに安全性を強化する方法

世界中で広く利用されているChromeブラウザは、業務における重要なエンドポイントとなっているため、強固なセキュリティが必要となる。そこでChromeブラウザを起点に、企業が安全にWebへのアクセスポイントを確立する方法を紹介する。

製品資料 グーグル合同会社

Chromeの拡張機能:企業における今求められる管理戦略とは

Google Chromeの拡張機能は生産性の向上に不可欠な機能であり、ユーザーが独自にインストールできる一方、IT管理者を悩ませている。ユーザーデータを保護するためにも、効率的な運用・監視が求められるが、どのように実現すればよいのか。

製品資料 arcserve Japan合同会社

データの保全・保護・復旧を全方位でカバーするバックアップ戦略とは?

データ活用が企業の命運を握る今日にあって、絶対に避けなければならないのがデータの損失だ。本資料では、ビジネスクリティカルな状況下でデータの保全・保護・復旧を可能にするバックアップソリューションを紹介する。

製品資料 arcserve Japan合同会社

自社に必要な機能だけを選び、最適かつ効率的なバックアップ環境を構築する方法

データのバックアップに求める機能は、企業によってさまざまだ。必要な機能だけを選択して導入することで、無駄なく効率的なデータ保護が可能になる。そこで注目されているのが欲しい機能だけを搭載できるバックアップ/リカバリー製品だ。

製品資料 arcserve Japan合同会社

運用を大幅に軽減し、多様なニーズに対応するバックアップ対策とは?

データバックアップは、安定した経営を維持し、災害やサイバー攻撃のリスクから業務を守るために不可欠である。とはいえ、自社に最適なバックアップ手法の確立は簡単なことではない。豊富な機能を備えているソリューションに注目したい。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...