Oracleは「Oracle Database」の古いバージョンをアップグレードするようユーザー企業に推奨している。背景にはサポート体制の継続以外にも、同社の戦略的な狙いがあるという。それは何か。
Oracleは、同社のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)「Oracle Database」について、バージョン「19c」へのアップグレードを推奨している。19cはLTS(長期サポート版)であり、ユーザー企業がデータベースの運用とパッチ(修正プログラム)の適用を継続できるためだ。
現在バージョン「11.2.x」または「12.1.x」を運用している場合、運用中のOracle Databaseを「Terminal Release」(最終リリース)にアップグレードしてから、19cへのアップグレードを続行する必要があるとOracleは説明する。Terminal Releaseは、同社によるサポートが終了したバージョンを指す。
つまりOracleがユーザー企業に求めているのは、Oracle Databaseを古いバージョンから最新バージョンに移行する際、最新バージョンまでの各バージョンを購入することだ。システム保守サービスベンダーRimini StreetのCEOセス・ラバン氏が指摘するように、これにはコストと労力を伴う。「企業は通常、必要がないならデータベース管理システム(DBMS)を更新する気にはならない。特定の理由や投資利益がなければ、DBMSの更新の優先順位は低くなる」とラバン氏は指摘する。
ラバン氏はこれまでに、バージョンが異なるOracle Databaseを数百から数千台のインスタンス(仮想サーバ)で運用している大企業に話を聞いてきた。すると「Oracle Databaseを最新バージョンに移行しない理由」のほとんどは「コスト」だったという。DBMSの移行にはライセンス料金の確保だけではなく、移行作業も必要だ。「移行作業は数年掛かることもある上、その投資利益は十分とは言えない」と同氏は述べる。
「Oracleの戦略は、IT業界がユーザー企業にシステムのアップグレードを促すための『カルテル』だ」とラバン氏は表現する。ITベンダーは「最新バージョンしか提供したくない」「何億ドル分もの利益を生む可能性があるプロジェクトにユーザー企業を従事させたい」と考えているというのが同氏の見解だ。
「それを実現させようとOracleは決断した。このようなアップグレード方式はIT業界を潤す。金銭を生み出すには、ユーザー企業に何か新しいことを求めなくてはならない」(ラバン氏)
システム保守サービスベンダーなどのサードパーティーのサポートによって、このアップグレードサイクルから脱出できる場合がある。大規模かつ複雑なシステムでOracle Databaseが稼働しており、DBMSを移行できないのであれば、サードパーティーのサポートを利用することで、最新バージョンへのアップグレードに予算を費やすことを回避できる。アップグレードの準備が整ったら、Oracleとの契約を更新すればよい。IT部門がOracleのライセンス料金を削減できれば、さらなる節約につながる可能性もある。
ラバン氏はユーザー企業に対し、IT予算をビジネスの成果創出につながるイノベーションに使ってほしいと主張する。「にもかかわらず、既存システムを維持するための出費はあまりにも多い。われわれのようなベンダーの出番は、そうした出費を抑えるためにある」と同氏は話す。
Oracle Databaseは企業向けアプリケーションのSystem of Record(SoR:記録のためのシステム)として機能することがよくある。「こうしたミッションクリティカルな製品やサービスを、戦略的ITと混同する人が多過ぎる」とラバン氏は指摘する。最高情報責任者(CIO)に訴え掛けるとき、自社にイノベーションを促し、生産性を向上させる戦略的ITプロジェクトの資金なら調達できる見込みはある。だがシステムのアップグレードについて理解を得られることはまれだ。
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