常に無料のOCI「Always Free」の注意点と、Oracle“大盤振る舞い”の狙いはOracle Cloud Infrastructureの無料プラン「Always Free」とは【後編】

Oracleは「Oracle Cloud Infrastructure」をいつでも無料で利用できるサービス「Always Free」を充実させている。Always Freeを利用するときの注意点と、Oracleが無料プランの提供に積極的な理由を説明する。

2021年07月20日 05時00分 公開
[Chris KanaracusTechTarget]

 Oracleのクラウドサービス群「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)は、期間の制限なく無料で利用できるサービス「Always Free」のラインアップを徐々に充実させている。ユーザー企業や開発者はAlways Freeを使い、モバイルアプリケーションやイベント駆動型アプリケーション、データベースアプリケーションなどを構築できる。

 「Always Freeを利用することで、最新技術を活用したアプリケーションを無料で開発可能だ」と、OracleでOCI開発者サービス担当シニアバイスプレジデントを務めるダン・ゲリティ氏は語る。前編「常に無料のOCI『Always Free』の基礎 何が使える? AWS無料プランとの違いは?」に引き続き、Always Freeを利用するときの注意点と、Always Freeを提供する同社の狙いを説明する。

Always Freeの注意点と、Oracleが無料化に熱心な“あの狙い”

 Always Freeは利用可能なリソース(ストレージ容量など)や機能に制約を設けていることに加え、1つのOCIリージョン(データセンター)しか利用できない制限がある。企業の経営に関わる重要なアプリケーションに不可欠な、耐障害性やフェイルオーバー(予備システムへの切り替え)構成は実装できない。こうした仕組みを必要とするユーザー企業がAlways FreeでPoC(概念実証)を作成した後、有償サービスにアップグレードしてアプリケーションのスケールアップやスケールアウトを実施するようになることがOracleの狙いだ。

 ゲリティ氏によると、具体的なユーザー企業数は非公開だ。ただしAlways Freeの利用規模は2020年に大きく拡大したという。

無料利用プランを提供するベンダーはOracleだけではない

 2021年時点のOCIはOracleのIaaS(Infrastructure as a Service)の第2世代で、同社が提供するSaaS(Software as a Service)のインフラとしても利用されている。同社が「Oracle Cloud Infrastructure Classic」(OCI-C)と呼ぶ第1世代は、クラウド市場で大きなシェアを獲得することはできなかった。

 OCIもAWSやMicrosoft、Googleのクラウドサービスに後れを取っている。OracleはAlways Freeを通して主に開発者の人気を獲得し、クラウド市場でのシェア拡大につなげたい考えだ。

 当然ながら他のクラウドベンダーも無料利用プランを提供し、利用拡大を図っている。調査会社Constellation Researchのアナリストを務めるホルガー・ミューラー氏は「どんな大手ベンダーであっても、新しいサービスの採用を促進するには無料利用プランを提供する必要がある」と話す。「開発者が新しいサービスを試したり、ユーザー企業が試作したアプリケーションを評価したりするには何を提供すればよいのかを、ベンダーは検討する必要がある」(同氏)

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