これから深刻になる「ストレージ」と「マルチクラウド」の問題とは?マルチクラウド時代のストレージの使い方【前編】

企業が複数のインフラでストレージを稼働させることが当たり前となった今、これらのストレージを適切に管理するにはどうすればよいのか。Hitachi Vantaraの新製品と共にストレージ市場の動向を考えてみよう。

2023年12月01日 05時00分 公開
[Scott SinclairTechTarget]

 ストレージベンダーのHitachi Vantaraは2023年10月に、新しいストレージ管理ソフトウェアの「Hitachi Virtual Storage Platform One」を発表した。これは、ストレージ市場のトレンドを浮き彫りにした製品だと言える。

 Hitachi Vantaraは、ユーザー企業のデータセンターやクラウドサービス、エッジなど、あらゆる場所に導入できるソフトウェア定義ストレージを提供することを方針に掲げる。さまざまなアプリケーションのインフラとして自社製品を利用可能にし、ユーザー企業のアプリケーションとデータのセキュリティ対策やデータ移行を簡略化することも目指している。その背景には何があるのか。

これからの当然と、ストレージに関する問題とは

 米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)がハイブリッドクラウド(オンプレミスインフラとクラウドサービスを併用すること)やマルチクラウド(複数のクラウドサービスを併用すること)についてユーザー企業に尋ねた調査では、以下の傾向が明らかになった。

  • 87%の企業が「自社のアプリケーションインフラは、今後2年間でより多くの拠点に分散する」と考えている。
  • 81%の企業がデータセンターやクラウドサービス、エッジなど複数の拠点をまたぐアプリケーションで、データを行き来させることの困難さに直面している。

 今や企業が複数のインフラにデータやアプリケーションを分散させることは当たり前になった。その結果、企業ではアプリケーションとデータの移植性を高める必要性が増している。アプリケーションやデータの移植性を高めるにはまず、ストレージの購入プロセスを見直す必要がある。

マルチクラウドを重視する「Virtual Storage Platform One」

 Hitachi VantaraはVirtual Storage Platform Oneを提供することで、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドでのストレージ管理をより容易にしようとしている。Virtual Storage Platform Oneは以下のような機能を搭載しており、ユーザー企業はクラウドサービスの管理コンソールを通してこれらの機能を利用できる。

  • レプリケーション(データの複製)の運用を簡略化する機能
  • アプリケーションの状況に応じてストレージの容量を自動で調整する機能
  • 複数のインフラにまたがるストレージを同期し、可用性と耐障害性を向上させる機能

 企業がストレージを新しく購入するときの意思決定は、もはや部署や支社ごとに実施すべきではない。コンテナアーキテクチャの採用が進み、アプリケーションの移植性を高める需要が高まっていることで、現代のストレージにはデータとアプリケーションを自由に移動させるためのアジリティー(機敏性)が求められている。

 マルチクラウドで自社製品を利用可能にすることは、ストレージベンダーが競争力を高めるための条件になっている。大量のデータを必要とする生成AI技術を巡るIT市場の盛り上がりを背景に、ストレージのアジリティーへの要求は高まり続けると考えられる。ユーザー企業は、複数のアプリケーションからさまざまな形式のデータを取り込んで活用できるようにすることを必要としている。


 後編は、オンプレミスインフラとクラウドサービスの双方でストレージを運用するようになった企業が、ストレージを調達するときのポイントを説明する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

製品資料 ニュータニックス・ジャパン合同会社

AI/クラウドネイティブ導入の課題を解消、HCIベースのクラウド基盤とは?

AIおよびクラウドネイティブの取り組みが、企業の成長や他社との競争において欠かせないものになってきた。その一方で、IT担当者の多くが、これらの取り組みをどう進めればよいのか分からず、ベストなIT環境を見いだせていないようだ。

製品資料 ニュータニックス・ジャパン合同会社

VMwareによる仮想化環境の「多角化」がリスクの軽減につながる理由

VMware買収以降、仮想化プラットフォームにおける価格の不確実性といった新たな課題が論じられるようになった。その中で、AI/クラウドネイティブをはじめとする重要施策について、第二のプラットフォームを模索するケースも増えている。

製品資料 ニュータニックス・ジャパン合同会社

サイロ化したIT環境を統合して運用管理に一貫性を、3分で学ぶ改善の秘訣とは?

クラウドをはじめとする新たなテクノロジーは、IT環境の進化や強化に貢献したが、複雑化やサイロ化を招き、コストの増大や業務の属人化といった問題も引き起こした。これらを解消し、一貫性のある運用管理を実現する方法とは?

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画

最新インフラの導入/運用でAIプロジェクトを成功させるための勘所

企業がAIプロジェクトを進める際、その成功にはさまざまな要因が絡んでくる。インフラの導入/運用、予算や人材の配分、計画立案などだ。では、どうすればAIプロジェクトを破綻なく成功させることができるのか、その勘所とは。

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画

AI時代に高まるストレージの重要性――選ぶべきはSSDか? HDDか?

生成AIをはじめとしたAI技術の進化と活用拡大で、SSDやHDDといったストレージの重要性はますます高まっている。そんなAI時代のストレージには、SSD、HDDどちらを選べばよいのだろうか。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...