電力効率の高い「グリーンストレージ」を採用するなら「クラウドストレージ」の利用が有効な選択になる。その理由を整理した上で、ストレージ関連のコストを抑制するための基本的な考え方を紹介する。
前編「『SSD』『HDD』を“省エネ”で比較 『グリーンストレージ』に適するのは?」は、ストレージの電力効率を高める低消費電力のストレージ「グリーンストレージ」の要素技術を解説した。グリーンストレージを検討する場合、ストレージをクラウドサービスとして利用できる「クラウドストレージ」も選択肢になる。自前でハードウェアを保有する形態からクラウドサービスに切り替えれば、ストレージ関連の電力消費はクラウドベンダーが担うことになる。
主要クラウドベンダーは、電力効率の高い“グリーン”なデータセンター運用に注力している。Googleは2030年までに、クラウドサービス群「Google Cloud Platform」の運営に使用する電力を、全て太陽光発電や風力発電などによるクリーン電力に切り替えると表明した。「こうしたクラウドサービスの利用は、消費電力削減に向けた有効な選択になる」と、ITコンサルティング企業PWV Consultantsの創業者兼マネージングパートナー、ピーター・バンアイペレン氏は話す。
クラウドストレージは、スケールメリットによる電力消費削減の効果も期待できる。主要なクラウドサービスは広く利用され、通常、サーバやストレージといったリソースは複数のユーザー組織間で共有する。そのためクラウドサービスを運用するデータセンターのリソース使用率は高くなる傾向にある。
さまざまな組織にとって、クラウドサービスの利用はグリーン化の取り組みに大きな恩恵をもたらす。「1社の利用ではリソース使用率が高くならなくても、他の企業と共有することでリソースを有効に利用できる。大幅に電力消費を増やす結果にはならない」(バンアイペレン氏)
ベンダー各社は、クラウドサービスを運用するデータセンターに運用自動化の仕組みを取り入れ始めている。人の介在を減らせば、間接的な電力消費も抑制できる。電力消費量が少ない新たな冷却方法の実験も進んでいる。Microsoftの海底データセンタープロジェクト「Project Natick」がその一例だ。
クラウドサービスはリソースの使用量や使用する機能に応じて、毎月のコストとして料金を支払う形態が一般的だ。そのためユーザー組織が自前でストレージを購入したり、ビジネスに必要な機能を導入したりするためのコストを減らせる可能性がある。
自前でストレージを保有する場合は、ストレージの電力効率を考える上ではギガバイト当たりの電力消費に重点を置く必要がある。1つのメモリセルに複数bitを格納する高密度なNAND型フラッシュメモリを採用したフラッシュストレージは、格納するデータの高密度化が可能なため、電力効率の向上にも効果がある。さらにギガバイト当たりの電力消費を削減したい場合は、大容量のHDDが効果的だ。「性能や使い勝手などの要件と二酸化炭素(CO2)排出の効果を考慮して、自組織に最適なストレージを選択する必要がある」と、コンサルティング会社EYの技術トランスフォーメーションプラクティス担当プリンシパル、アリシア・ジョンソン氏は話す。
グリーンストレージの導入に踏み切る前に、アプリケーションが求める処理性能や容量などの要件も明確にしておくことが欠かせない。「アプリケーションの性質は、必要とするストレージ技術を判断する上で重要になる」と、ハードウェアベンダーSuper Micro Computerのシニアバイスプレジデント、ビック・マリャラ氏は指摘する。
ストレージ自体のコストは容量や処理性能に左右される。低消費電力状態に移行する機能があるかどうかは、電力消費量に影響を与える要因となる。この他、マリャラ氏はストレージの寿命、不要になった場合の再利用や処分の方法などについても考慮する必要があると説明する。
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