事業を成功させるために、何か目標を設定する必要はあるのか。目標がなくても事業は成功するのか。専門家の見解を基に、目標を設定する意義を整理する。
経営において、事業目標は何のために必要なのか――。成果を導く事業目標を設定するには、どのような情報が必要なのか――。事業目標がない状態は、何が問題なのか――。専門家の考察を基に、これらの疑問に対する答えを探る。
企業が成功を収める上では事業目標の設定が欠かせない。専門家たちは一貫してそう主張する。
調査会社Gartnerでディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリストを務めるアービング・タイラー氏は、「当社や他社が実施したさまざまな調査から、事業目標を持たない企業がミッションを実現するのは困難だと分かる」と話す。タイラー氏によれば、事業目標を持たない企業の7割近くが、事業を成功させることができなかった。事業目標がないと、経営層から新入社員までの誰もが、自社にとっての優先事項を理解できなくなるからだ。事業目標は、日々の活動や意思決定を円滑に機能させる上で重要な役割を果たす。
事業目標があるからこそ従業員は、個人およびチームの判断に優先順位を付けられるようになり、同じ目標に向かってチームが力を合わせられるようになる。IT調査会社Info-Tech Research Groupのインダストリープラクティスでシニアリサーチアドバイザーを務めるジェニファー・ジョーンズ氏は企業を船になぞらえ、「乗組員が目的地まで一緒に船をこぎ、予定通りにたどり着くための行動を動機付ける時刻表のような役割として、事業計画が存在する」と説明する。
「事業目標がないのは事業を進めるための軌道がない状態であり、その結果として企業は“あらぬ方向”に進みかねない」(ジョーンズ氏)。戦略的なビジョンにひも付けられている事業目標は、組織に進むべき方向を示す。検討に検討を重ねた事業目標があれば、従業員は何にフォーカスすればよいのかを理解できる。やる気も高まるし、企業が取り組むべき具体的な目標も設定できる。
事業目標があることで、各部門が成果を出せているかどうかも把握できるようになる、とジョーンズ氏は補足する。そこでIT部門が果たす役割は、企業を成功に導くための人材、プロセス、技術を見極め、事業目標の達成を支援することだ。「IT部門も事業計画の策定に参加して、どのような事業に関与しているか、どのような事業を開発することが必要かを明らかにする必要がある」と同氏は主張する。
その際に、ビジョンやミッションを各部門に伝えるだけ伝えて、実現するのは部門に任せる、というのは「十分だとは言い難い」とタイラー氏は注意を促す。そのようなやり方では、従業員は取り組む意義を理解できず、当惑してしまう可能性がある。「事業目標がなければ、従業員は各部門の業務を通じてミッションをどのように実現できるかが分からないだろう。業務がミッションの実現につながることを理解できず、何もしないといった事態に陥る可能性もある」と同氏は懸念を示す。
事業目標を設定しその進捗(しんちょく)を管理することには、以下の意義がある。
アイオワ大学ティッピー経営大学院(University of Iowa Tippie College of Business)でリサーチプロフェッサー兼幹部教育の担当ディレクターを務めるスティーブン・コートライト氏は、事業目標を設定することで得られる効果について「事業目標があれば、従業員が企業のミッションを理解できるようになる」と話す。その結果として各自が具体的なアクションと成果を定め、やる気を出して取り組むようになる。「人間は自分よりも何か大きなものに貢献していると実感すると、より積極的に関わろうとし、さらなるやる気を発揮する」(コートライト氏)
後編は、事業目標を設定するための10個のステップを紹介する。
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