だから事業目標を達成できない――適切な目標設定に不足している情報とはいまさら聞けない「事業目標の立て方」【前編】

事業目標の通りに成果を得られないとき、まず着目しなければならないのはどの部分なのか。専門家たちの見解を基に、事業目標とは何か、適切な設定には何が必要なのかを整理する。

2024年01月17日 05時00分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

 事業目標を立てたものの成果を得られないと感じたとき、事業目標の何を再検討する必要があるのか。事業目標を設定する上で把握すべき情報について、専門家たちの見解は。

いまさら聞けない、事業目標の役割とは?

会員登録(無料)が必要です

 事業目標とは、組織が一定期間内に獲得しようとする成果を明示したものだ。目標の具体的な到達点と期限を設け、その達成度合いを評価する。

 「事業目標は各事業の足並みをそろえるために存在する」。こう語るのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院でプリンシパルリサーチサイエンティストを務めるジョージ・ウェスターマン氏だ。同氏は米国若年層の就労支援を目的とする団体Global Opportunity Initiative(GOF)の発足メンバーでもある。最高情報責任者(CIO)やIT部門の経営幹部を対象とした年次イベント「MIT Sloan CIO Symposium」では共同議長を務め、ITを革新的な方法で導入して自社に大きな事業価値をもたらしたCIOを表彰する「MIT Sloan CIO Leadership Awards」のモデレーターも務めている。

 事業目標を適切に設定するに当たっては、まずミッションやビジョンを持つことが重要だ。ミッションやビジョンを具現化し、顧客や市場にいかに価値をもたらすかを示すのが行動指針(ミッションステートメント)だ。

 「ビジョンとは、企業の将来像だ」。こう語るのは、調査会社Gartnerでディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリストを務めるアービング・タイラー氏だ。同氏によると、一般的な企業では経営層がビジョンを策定して全社に伝達し、マネジャー層がビジョンの実現に向けて事業目標を定める。

 コンサルティング企業UST GlobalでCTO(最高技術責任者)兼データサービス責任者を務めるニランジャン・ラムサンダー氏は、「事業目標は具体的で現実的なものであるべきだ」と語る。

 コンサルティング企業/国際会計事務所KPMGでアドバイザリー部門のナショナルマネージングプリンシパルを務めるアーテフ・ゼイム氏は、事業目標を「自社の方向性を定めるために導入する多層構造の一部」だと表現する。「どういうビジネスなのか、何をしようとしているのかを洗い出す。その次に事業目標を定め、進捗(しんちょく)や達成度合いを計測するための手法を決めることで、目標の実現をより現実的なものにする必要がある」とゼイム氏は主張する。

大切なのは「具体的な目標とスケジュール」

 事業目標は幾つ掲げてもよい。企業全体の目標だけでなく、部門ごとの目標も設定してよい。短期や中期、長期に分けても構わない。

 「ただしどのような事業目標であっても、具体的な目標と目標達成までの具体的なスケジュールを明示する必要がある」。こう語るのは、IT調査会社Info-Tech Research Groupのインダストリープラクティスでシニアリサーチアドバイザーを務めるジェニファー・ジョーンズ氏だ。例えば「今後3年間で製造部門を20%成長させる」というのは効果的かつ具体性がある事業目標だ。

 事業目標には「企業が何を達成したいのか」を書くが、「それをどのように達成するか」までは書かない。事業目標の達成に向けたアクションを具体的に記載するのは、事業計画だ。

 企業によっては、事業目標とOKR(目標と成果指標:Objectives and Key Results)を別物だと見なしていることに注意が必要だ。こうした企業はプロジェクトの中間目標を意味する「マイルストーン」を事業目標と見なし、事業目標の達成までのプロセスをOKRと見なしている場合がある。


 中編は、専門家の見解を基に、事業目標の設定が必要な理由を考察する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 株式会社日本能率協会マネジメントセンター

法人向け:DXを支援する、経産省策定「DXリテラシー標準」を学べるeラーニング

全社的戦略に基づいた一体感のあるDXを実現するには、全社員の共通言語としてDXリテラシーを身に付けることが重要だ。そこで、経済産業省策定の「DXリテラシー標準」に連動した内容を学習できるeラーニングサービスに注目したい。

製品資料 株式会社日本能率協会マネジメントセンター

効果的な1on1で組織力を向上、AIで対話力を改善する支援ツールとは

管理職の対話型マネジメントによる組織力の活性化を目的に、「1on1」を導入する企業が増えている。しかし、さまざまな課題も浮上している。最先端のAI技術で、客観的に1on1を分析し、PDCAを回して改善ができる1on1支援ツールを紹介する。

製品資料 株式会社日本能率協会マネジメントセンター

“DX推進が当たり前”の組織を作るために、従業員のITリテラシーを高める方法

全社的にDXを進めるには、全従業員がITの基礎知識を含めたDXリテラシーを習得する必要がある。個人や部署間のITリテラシーに格差がある中、注目されているのがDXの実務に必要な知識の理解度を確認する「DX基礎能力試験」だ。

製品資料 日本オラクル株式会社

CIO必見:高度なAIテクノロジーでイノベーションの加速を支援する方法

変化し続ける規制に対するコンプライアンスを犠牲にすることなく、イノベーションを加速させ、コストの削減やサイバー脅威への対処も実現するにはどうすればよいのだろうか。その鍵となるのが、最新のAIとクラウドテクノロジーの活用だ。

市場調査・トレンド 日本オラクル株式会社

クラウド戦略策定の参考にしたい、CIOが注目すべき10のクラウドトレンドとは

企業システムのインフラとしてクラウドが当たり前の選択肢となった昨今、自社のクラウド戦略を練るうえで、さまざまな角度からクラウドの動向を把握しておくことが望ましい。CIOが注目すべき10のクラウドトレンドを紹介する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...