Google「Gemini」やAMD「APU」は後発ではなくAI戦国時代の“予兆”では?「AI向けプロセッサ」の競争激化【後編】

GoogleはAIモデルの「Gemini」や最新「TPU」を発表し、AMDはAI向けの最新プロセッサを発表するなど、AI市場の競争が本格化しようとしている。AI技術とプロセッサを取り巻く今後の行方は。

2024年01月15日 05時00分 公開
[Don FluckingerTechTarget]

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 汎用(はんよう)的なAI(人工知能)モデルの「Gemini」や最新版「TPU」(テンソル処理ユニット)をGoogleが2023年12月に発表するなど、AI関連の市場は本格的な成長期に差し掛かっている。AI関連の演算処理を担うプロセッサ市場の競争も、激しさを増す見込みだ。半導体ベンダーAdvanced Micro Devices(AMD)は、NVIDIAを追う形で新製品を打ち出してきた。AI関連の市場がこれからどう動くのかを左右するのが、AI向けプロセッサだ。

Googleは「TPU」で本腰、AMDは「APU」でNVIDIA猛追か?

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 GoogleはGeminiの発表に合わせて、スマートフォンに「生成AI」(ジェネレーティブAI)を搭載する計画や、AI向けに独自開発した集積回路TPUの最新版「Cloud TPU v5p」を発表した。このTPUは、Geminiが高速に動作するように設計されており、地図アプリケーション「Google Maps」(Google マップ)や動画共有サービス「YouTube」、メールサービス「Gmail」などでAIモデルが動作するのを支える。

 AMDは、AI関連の処理を高速化するAIアクセラレーターとして「AMD Instinct MI300」を発表した。GPU(グラフィックス処理装置)を搭載するこのAIアクセラレーターを、AMDはAPU(アクセラレーテッド処理装置)と呼んでいる。同社はこのAPUを擁することで、AI向けGPUで強固な立場を築いたNVIDIAを追随する構えだ。

 「将来的に、ユーザー企業は異なるベンダーが提供する複数のAI関連サービスを併用するようになる可能性が高い」と、調査会社Gartnerのアナリストを務めるチラーグ・デケイト氏は語る。今後はAI向けプロセッサが多様になり、アプリケーションの動作性能やサービス価格の優劣が、半導体ベンダーが提供するプロセッサに左右されるようになる可能性がある。

 「AI向けのプロセッサが進化を続けるためには、競争が鍵になる」と語るのは、調査会社Futurum Researchの創設者であるダニエル・ニューマン氏だ。テキストや画像を自動的に生成するAI技術である生成AIは、かつてないほどの大きな変革を引き起こそうとしている。生成AIの今後の発展には、ハードウェアとソフトウェアの市場における競争と、健全で活気のあるエコシステム(協業や競争の生態系)が不可欠だ」(同氏)

クラウドでもオンプレミスでもAI

 インフラの利用形態においてはクラウドサービスの利用拡大が顕著だ。ただしユーザー企業がインフラを保有するオンプレミス型のデータセンターにも、依然として需要がある。デケイト氏は「自社のデータセンターやコロケーション施設に、独自のGPUを導入する動きが目立っている」と話す。AI技術を扱う上では、データのプライバシーを守ったり、知的財産権の侵害を回避したりする対策が必要になるからだ。

 ユーザー企業は今後、GoogleやAmazon Web Servces(AWS)、Microsoftなどのクラウドサービスと、自社のデータセンターを併用する利用形態を採用せざるを得なくなる。「AMDのAIアクセラレーターは大手クラウドベンダーだけではなく、ユーザー企業も自社のデータセンターに個別に導入することになる」とデケイドは見込む。

 AMDはAMD Instinct MI300の発表において、データセンターで使えるGPUだけではなく、クラウドベンダーとの協力や、AI関連の開発を支援するソフトウェア群についても説明した。「企業はAMD製品を中心にして、AI関連の戦略を本格的に始動できるようになった」(デケイド氏)

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