「ノートPC」もう不要に? 激重PCからChromebookまでの“劇的過ぎる”進化ノートPC不要の時代がすぐそこに【中編】

AWSのシンクライアント「Amazon WorkSpaces Thin Client」やGoogleの「Chromebook」など、ノートPCの代替手段の開発が進んでいる。ノートPCを使わなくなる日は近いのか。

2024年01月13日 08時00分 公開
[Don FluckingerTechTarget]

 シンクライアント市場には、新製品が登場し続けている。Amazon Web Services(AWS)は、2023年11月にシンクライアントの「Amazon WorkSpaces Thin Client」を発表した。シンクライアントが、企業のノートPCと本格的に置き換わる時代は来るのか。

 PCの利用が一般に広がり始めた1990年代からの時代を振り返りつつ、デバイスや利用方法がどのように変わってきたのかを踏まえて、今後を展望してみよう。

ノートPCの軽量化とその限界

会員登録(無料)が必要です

 1990年代の初めには、ガラス製のブラウン管ディスプレイを内蔵したAppleのPC「Macintosh SE/30」を仕事のためにバッグに入れて持ち歩かなければならない人たちがいた。キーボードとマウスを含めると重量は9キロを越える。IBMやCompaq Computerが提供していた、持ち運べるPCの「ポータブルマシン」を引きずっている人たちもいた。ポータブルマシンの重さは12キロを超えていた。

 ノートPCは軽量化が進んでいる。半導体ベンダーのIntelが認定し、HPやASUSTeK Computer(ASUS)、Dell Technologies、LenovoなどのPCベンダーが製造販売する薄型で軽量のハイエンドノートPC「Ultrabook」(製品の総称)は、筐体(きょうたい)がアルミニウム製で、約1キロの重さだ。この重さで、1TB以上のSSDを搭載しているモデルもある。

 ユーザー企業で普及しているノートPCは、約1.4キロから2.5キロほどの製品が一般的だ。これらの製品は、頻繁に出張でPCを抱えながら空港や駅を移動するエンドユーザーにとっては、持ち運びのしづらさを感じさせることがある。

 MicrosoftやDell Technologies、Lenovo、HPなどのPCベンダーは、タブレット型のPCを提供している。キーボードを取り外してタブレットとして使えるデタッチャブル型の端末と、キーボードと一体化したコンバーティブル型の端末があり、OSはMicrosoftの「Windows」またはGoogleの「Android」が一般的だ。

 タブレット型のPCは、立ち仕事とデスクワークが両方あるエンドユーザーに人気がある。例えば病院の看護師が、施設内を巡回するときや往診のときはタブレットとして端末を用いて、自身のデスクではキーボードを使い、患者のカルテに書き込むといった使い方ができる。しかしこうしたタブレット型の端末は、デスクワークが中心の一般的な企業では避けられる傾向にある。なぜなら管理の必要がある端末の種類と数が増えるからだ。ノートPCでニーズを満たせている企業にとっては、タブレット型のPCをあえて使う必要がない。

 タブレット型のシンクライアントの場合は、端末にアプリケーションやデータをインストールせずに利用できるため、従来のタブレット端末よりも管理負荷を抑えられる。さらにノートPCよりも軽量で持ち運びがしやすくタッチパネルが利用できるため、ノートPCに置き換わる選択肢になる可能性がある。

クラウドベンダーが参入するシンクライアント市場

 調査会社Gartnerのアナリストであるシド・ナグ氏は、Googleがシンクライアントの「Chromebook」を提供していることから、競合企業のMicrosoftも同社のオフィススイート「Microsoft 365」を基にしたシンクライアント版の「Surface」を発売すると予測する。両社と同じく大手クラウドベンダーのAWSが発表したAmazon WorkSpaces Thin Clientは幅86ミリ、奥行き86ミリ、高さ77ミリで重量が513グラムの筐体で、外付けディスプレイに接続して利用する。

 小型のシンクライアントであるAmazon WorkSpaces Thin Clientが市場に登場したことを受けて、シンクライアントを提供してきたDell TechnologiesとHPは、従来の製品よりも小型かつ使いやすい製品の開発を推し進める可能性がある。


 後編は、Amazon WorkSpaces Thin Clientがシンクライアント市場に与える影響を予想する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

市場調査・トレンド 横河レンタ・リース株式会社

PC運用管理者1030人に聞いた「PC運用の実態調査」、担当者を悩ます課題と解決策

近年の情報システム部門は多数の業務を抱えており、中でもPCの運用・管理担当者の業務負荷をいかに軽減するかが大きな課題となっている。1030人を対象に行った調査をもとに、PC運用・管理業務のあるべき姿を探った。

事例 Asana Japan株式会社

“208カ国の壁”を突破しスズキが残業35%減を実現、その全貌とは

“100年企業”スズキでは、DX推進のアクションプランに、「仕事のシンプル化」「ムダの削減」「全社的な可視化」を挙げている。同社はあるツールを導入したことで、業務の見える化や標準化、残業時間の35%削減を実現したという。

製品資料 SUSE ソフトウエア ソリューションズ ジャパン株式会社

システム乱立やコスト増の課題も、マルチLinux環境の運用をどう効率化する?

企業では「マルチLinux」環境が有効な取り組みとして浸透しているが、一方で管理の複雑化という課題も浮上している。本資料ではマルチLinux環境が浸透してきた背景やその利点を整理し、新たな課題の解決策について解説する。

製品資料 株式会社エクサ

AI時代のデータ管理術、低コストかつセキュアな環境を構築するための方法とは?

 デジタル化やクラウド利用の進展に伴い、企業のデータ量は増加し続け、これを狙うサイバー攻撃も激化している。データを守るためには保管場所が必要だが、低コストかつセキュアな環境を構築するためにはどうすればよいだろうか。

製品レビュー 株式会社ソフトクリエイト

Windows 11アップデートで発生しやすい問題とは? 円滑なOS移行方法を解説

Windows 10のサポート終了が迫り、Windows 11へのアップデートを考えている組織も多いことだろう。当然、アップデートには失敗したくないはずだ。ポイントを本動画で把握して、スムーズなOS移行を実現したい。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...