AI技術は今後、ネットワークにもより強い影響を与えるようになると考えられる。ただしAI技術を導入しさえすれば、運用がうまくいくわけではない。無線LANでAI技術を使うには何が必要なのか。
2024年、AI(人工知能)技術はさまざまな分野で重要な役割を果たすようになると考えられる。その一つが「無線LAN」を含むネットワークだ。この分野では無線LAN以外にも、「LTE」(Long Term Evolution)や「5G」(第5世代移動通信システム)のプライベートネットワークである「プライベートLTE」や「プライベート5G」が使われるなど、無線システムが多様化している。
プライベートLTEやプライベート5Gなどの無線システムは、一部の業界で普及し始めている。無線LANと、プライベート5GやプライベートLTEを組み合わせて使用する企業も出てくるだろう。この場合、自社で回線のサービス品質をまとめて監視できるかどうかが、ネットワークの安定稼働を左右するようになると考えられる。ただしそれを手作業で実施するのは楽な仕事ではない。
「LTEや5Gのネットワークと無線LANを分析して比較する作業を自動化することで、ダイナミックかつリアルタイムな意思決定が可能になる」。無線LAN関連のソフトウェアベンダーWyebotのCEO兼共同設立者であるロジャー・サンズ氏はそう語る。そうした運用に必要なのがAI技術だが、ネットワーク分野ではAI技術の活用がすぐには進まない可能性がある。
AI技術により無線LANの稼働を安定させ、データ伝送速度などのパフォーマンスを向上させることができる。ただし他の技術と同様、AI技術にも課題がある。AI技術は、導入するだけで必ず成果が得られるものではなく、単なるツールに過ぎない。
ベンダーがAI技術を自社製品に標準で搭載すれば、AI技術は主流になるだろう。それでも全ての組織がAI技術を使用するわけでもなければ、成果を生むように使いこなせるわけでもない。
無線ネットワークのアナリストであるリー・バッドマン氏は、「ネットワークの自動化が成功するかどうかは、ネットワークの技術だけではなく、ネットワークを運用する専門家にも左右される」と話す。適任の技術者がいなければ、技術の活用は成功しない。
機械学習を含むAI技術に熟練した専門家は、世界各国の組織で不足する傾向にある。データ分析ツールベンダーSAS Instituteが2022年9月に公表した調査結果によれば、英国の組織の44%がAI技術への投資を計画している一方で、63%の組織がAI技術関連のスキルを持つ従業員が十分にいないと答えた。この調査でSAS Instituteは、銀行や保険、政府、小売りを含む9業種の39人に調査した。
「AI技術があるだけで良い結果が出るわけではない」とバッドマン氏は指摘する。熟練した技術者がいる組織こそが、無線LANの運用においてAI技術を活用できるのだという。
AI技術の導入がしやすくなるように、ベンダーは無線LAN運用におけるAI技術導入の事例を提供する必要があるとバッドマン氏は強調する。AI技術の用途としては、トラブルシューティングの迅速化や正確な分析、ネットワークの信頼性向上などが考えられる。
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