有給休暇の日数に上限がない「無制限有給休暇」は夢のような制度だが、これが必ずしも職場や人に幸せをもたらすとは限らない。その“意外な弊害”とは何なのか。
上限なしで有給休暇を取得できる「無制限有給休暇」(UPTO:Unlimited Paid Time Off)という制度を採用している企業がある。この制度があると、従業員の生産性が向上したり、職場への定着率が向上したりする利点が見込める。
だがこの「休み放題」の制度が、必ずしもうまく機能するとは限らない。その場合、むしろ有給休暇の日数が限られていることの方が、幸せだと感じるはずだ。休み放題になることによる意外な弊害とは。
無制限有給休暇を運用するに当たっては幾つかの課題がある。
無制限有給休暇を実施すると、有給休暇日数の上限がなくなり、従業員が最低限取得しなければならない休暇日数の設定もなくなる。その結果、どの程度有給休暇を取得すれば問題になるのかの目安が分からず不安になったり、業務の進捗(しんちょく)に影響が出ないよう休みを取らなくなったりする従業員が出る可能性もある。コブ氏はその結果として、「有給休暇の取得状況を監視し、人事部門から従業員に休暇を取得するよう促す事態に陥ることもあり得る」と言う。フュルステンバーグ氏は、「従業員に一定期間の休暇取得を義務付けるルール作りも選択肢の一つだ」と話す。
無制限の有給休暇の制度を使えるようにしても、特定の日に休暇を取得できないように管理職が従業員を管理する場合がある。「どのような状況の休暇申請も承認する寛大な管理職もいれば、逆の姿勢を取る管理職もいるだろう」――フュルステンバーグ氏はこう話す。
特定の管理職が休暇取得の申請を却下し過ぎていないかどうかを監視するのは人事部門の業務だ。フュルステンバーグ氏によると、人事部門が有給休暇の取得状況を測定する際、一般的には全社規模でデータを確認することになる。「全社的に見て、休暇取得状況が良好であれば問題なく運用できている」と思い込むのではなく、有給休暇の取得状況が振るわない部門がないかどうかを確認しておきたいというのが同氏の指摘だ。
有給休暇制度を積み立て方式から無制限に切り替える場合、従業員がこれまで積み立ててきた休暇日数をどのように処理するのかは大切な問題だ。
「積み立てた有給休暇日数をリセットし、特定の日から日数無制限に切り替えることも一つの手だ」とフュルステンバーグ氏は述べる。ただしこの方法は、従業員から不満が噴出する可能性がある。
積み立てた休暇日数を企業が買い上げ、特定の日から日数無制限に切り替える方が、従業員からの不満が出にくくなる場合も考えられる。フュルステンバーグ氏は「現金で清算するのは簡単かつクリーンな方法だが、コストが高くつく」と指摘する。
病欠と有給休暇を区別しないと問題が発生する恐れがある。「休暇が従業員の体調不良に起因する場合、雇用主には関係する監督官庁への一定の報告義務が生じたり、疾病手当金の申請が必要になったりする場合があるからだ」(フュルステンバーグ氏)
監督官庁への報告義務を怠ることで企業が罰せられる場合もある。「無制限有給休暇の導入後も、病欠と有給休暇を分けた運用をすべきだ」ともフュルステンバーグ氏は語る。
時給制の従業員は通常、無制限有給休暇の利用対象にならない。そのため、月給制の従業員だけが無制限の有給休暇を使えることに不満を招く可能性がある。
この問題への対策として、時給制の従業員に追加の有給休暇日数を提供するといった仕組みを作ることをコブ氏は提案する。
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