データセンターを陸上に建設するのではなく、海中に沈める「水中データセンター」の活用に向けた取り組みが世界各地で進んでいる。水中データセンターにはどのようなメリットが見込めるのか。
水はデータセンターのハードウェアを冷却するのに大きな役割を果たしている。それをより有効に活用する考え方に基づくのが、海中にデータセンターを沈める「水中データセンター」だ。陸上に建設する一般的なデータセンターと比較して、水中データセンターにはどのようなメリットが見込めるのか。
データセンターの建設や運営に関連するさまざまな問題を解消できる可能性がある方法として、水中データセンターの活用を模索する取り組みが進んでいる。既にMicrosoftをはじめとした複数の企業が、世界各地でデータセンタを海底に沈めるプロジェクトに着手済みだ。そうした水中データセンターにはどのようなメリットが期待できるのか。
地球上の人口は、海岸から62マイル(100キロ)ほどの地域に集中する傾向にある。沿岸部近くの海中にデータセンターを沈めれば、沿岸部に居住する人々にネットワークの遅延を抑えてサービスを提供することができる。
データセンターを建設するために、住宅や店舗が集中する地域の土地を用意する必要がないこともメリットになる。
水中のデータセンターでは、サーバなどの機器が人によって物理的に動かされたり、触れられたりすることがない。乾燥窒素で満たした水中データセンターでは、腐食が起きにくい。こうした理由から、水中データセンターではハードウェアの故障率が陸上よりも低下すると見込める。
実際に、水中データセンターの実験をしたMicrosoftは、水中での故障率が陸上よりも大幅に低くなったと報告している。
水中データセンターは陸上のデータセンターよりも総じて小型になるため、電力消費量もより小さくなる。その必要なだけの電力を沖合の洋上風力発電所から海中に送電すれば、効率的でクリーンな電力供給が実現する。
水深が深くなるほど海水温も下がる傾向にある。そのため水中データセンターでは、機械式の冷却システムは不要だ。自然に熱が逃げる仕組みである「パッシブ冷却方式」を採用することで、環境負荷とコストを低減する冷却が可能になる。
水中データセンターは大抵の場合、工場で事前に大部分が出来上がっている。それを現地で組み立てればよいため、陸上のデータセンターを建設するよりも労力を抑え、より短納期で導入できる可能性がある。
次回は、水中データセンターのデメリットを解説する。
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