データセンターを水中に沈める実験が、世界の各所で進められている。データセンターによる電力や水の消費量が増える中で、水中データセンターはその解決策になるのか。
データセンターのハードウェアを冷却するのに大きな役割を果たすのは、空気だけではない。水もそうだ。水による冷却を発展させた形として、データセンターを海中に沈める複数の取り組みが進められている。データセンターによる電力や水の消費量増大が問題になる中、こうした「水中データセンター」に関心が集めるのはなぜか。その実態を探る。
世界中のデータセンターは陸上で稼働している。それは当然だが、世界中でデータ使用量が増え、コストや環境への負荷を含めてデータセンターの建設や運営に関連するさまざまな問題が浮上している。そうした中で、検討に値する選択肢の一つになり得るのが、海中データセンターだ。
データセンターは、人々が日々生成したり、利用したりするデータを保管している。通常、データセンターの立地は、電力コストの安さや土地の価格、地域への影響などを加味して選定される。特に土地の価格、地域への影響といった観点で水中データセンターの立地には利点がある。だが、水中にデータセンターを鎮める場合には、陸上に設置するのとは異なるコストがかかることが大きな障壁になる。
水中データセンターの一例が、Microsoftの海中データセンター計画「Project Natik」だ。同社はまず2015年に、カリフォルニア沖で小規模なデータセンターを105日間沈めるテストを実施した。
その次に、2018年に開始した第2フェーズでは、より大きなデータセンター「Northern Isles」をスコットランド沖の海底117フィート(約35.7メートル)の深さに2年間沈めた。Northern Islesは、長さ40フィート(約12.2メートル)、直径9フィート(約2.8メートル)の容器に864台のサーバを収容。データセンター内部は、低圧の乾燥窒素で保たれていた。
Subsea Cloudという企業も水中データセンターを設計し、商業利用に向けた取り組みを進めている。Subsea Cloudはサーバを「ポッド」と呼ぶ非加圧容器に収めている。ポッドでは、内部の技術を保護するために非導電性の液体が使われている。ポッドは最大で3000フィート(914.4メートル)の深さに耐えられる設計だ冷却には、積極的に冷却をしなくても自然に熱が逃げる仕組みである「パッシブ冷却方式」を採用しており、冷却のための装置は使わない。これによって炭素排出量や周辺への環境負荷は、最小限に抑えられる。
水中データセンターを専門とするHighlanderという企業は、2023年に中国海南島沖で商業用の水中データセンターを設置した。重量約1300トンのこのデータセンターは、水深約115フィート(35メートル)に位置している。Highlanderは水中データセンターを活用することで、土地や水、電力の使用を削減する計画だ。
次回は、水中データセンターのメリットをまとめる。
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