子どもをインターネットの危険から守るために、スマートフォン禁止のポリシーを導入している学校が複数存在する。教職員や保護者の懸念や被害の実態と、それに対処するための取り組みを紹介する。
英国のOSA(Online Safety Act 2023:オンライン安全法)が2023年10月に成立して1年以上が経過した。保護者と教職員は、インターネットのさまざまなリスクから子どもを保護するため、さらに厳格な対策の必要性を訴えている。
特に目立つのが、学校でのスマートフォンとSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の使用制限強化を求める声だ。2024年2月には、数人の保護者が「Smartphone Free Childhood」(SFC)を立ち上げた。SFCは、子どものスマートフォン使用の制限を提唱する活動団体だ。SFCが警鐘を鳴らすスマートフォンやインターネットの危険性にはどのような裏付けがあるのか。
スマートフォンの普及以降、保護者は子どもに対する影響を懸念している。以下はその一例だ。
英国は「X」(旧「Twitter」)や「Facebook」「TikTok」「YouTube」など、ソーシャル機能を持つオンラインサービスを規制しようと取り組んでいる国の一つだ。2025年初頭からは、これらのオンラインサービスの運営企業が違法コンテンツへの対処を怠った場合、英国情報通信庁(Ofcom)が訴追できるようになる。上級幹部には数百万ポンドの罰金や刑事制裁が課される可能性もある。
世界保健機関(WHO)が支援する国際的な研究プロジェクトHealth Behaviour in School-aged Children(HBSC)は、2024年10月に研究レポート「A focus on adolescent social media use and gaming in Europe, central Asia and Canada」を発表した。このレポートは、子どものインターネット利用に伴う問題の増加を指摘し、若者向けの安全なオンラインサービスの必要性を説いている。米国では、2023年に42人の州司法長官がMeta Platformsに対して訴訟を起こし、子ども向けの依存性のある機能について訴えた。
SFCの共同創設者であるクレア・ファーニホー氏は、OSAを「重要な第一歩」だと評しつつ、「現在子どもが受けている被害の一部にしか対処できていない」と指摘する。特に深刻なのが、スマートフォンやソーシャルメディアの“中毒的な設計”だという。「子どもは1日に何時間もスマートフォンを使用しており、影響は計り知れない」とファーニホー氏は述べる。
スマートフォンが関与するオンラインでの被害が拡大する中、英国の学校はスマートフォンの禁止に踏み切っている。ハートフォードシャー州セントオールバンズ市の小学校の校長が構成する団体St Albans Primary Schools Consortiumは2024年5月、保護者に対して、14歳以下の子どもにはスマートフォンを与えないようにすることを求める書簡を発表した。同年9月には、非営利のマルチアカデミートラスト(複数の学校が共同で運営する教育機関)Ormiston Academies Trust(OAT)が所属する公立学校において、段階的にスマートフォンの利用を禁止し始めた。
次回は、学校でのスマートフォン利用を禁止した実例とその効果を取り上げる。
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