「リアルユーザーモニタリング」と「合成モニタリング」の違いは?リアルユーザーモニタリング(RUM)とは【中編】

Webサイトやアプリケーションの問題を洗い出して改善を図るためにはパフォーマンスモニタリングの手法である「リアルユーザーモニタリング」と「合成モニタリング」が有効だ。両者はどう違うのか。

2025年06月25日 06時00分 公開

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 ユーザーがWebサイトやアプリケーションから短時間で離脱する場合、応答が遅い、ボタンやリンクの反応が悪いなどパフォーマンスに問題が起きている可能性がある。こうした状況においてユーザーの行動を分析し、Webサイトやアプリケーションのパフォーマンスを評価する手法が「リアルユーザーモニタリング」(RUM)だ。ユーザーの行動を監視する手法には「合成モニタリング」もあるが、RUMとはどう違うのか。RUMのメリット、デメリットと合わせて解説する。

RUMと合成モニタリングの違いはこれだ

 RUMと合成モニタリングは、どちらもパフォーマンスモニタリングの手法だが、それぞれ異なる目的に適している。RUMは、実際のユーザーとWebサイトやアプリケーションを必要とする。一方、合成モニタリングはシミュレーションのため、それらは不要だ。合成モニタリングはシミュレーション(模擬実験)のデータを使って、実際のユーザーがどのように振る舞うか、サイトが実際の世界でどのように反応すべきかを予測する。

 RUMの利点は、開発者がWebサイトやアプリケーションの実際の動作やパフォーマンスをリアルタイムに可視化できることだ。それに対し、合成モニタリングはWebサイトやアプリケーションのテストを通じてさまざまな問題を想定し、パフォーマンス評価の基準を決めやすくする。

 このようにRUMと合成モニタリングは異なる特徴を持つが、互いに補完することも可能だ。両方を組み合わせれば、Webサイトやアプリケーションのパフォーマンスに関するより深い洞察を得て、効果的なアプリケーションパフォーマンス管理(APM)に取り組める。

RUMの種類

 RUMは以下のように分類できる。

  • エラーログモニタリング
    • 発生し得るエラー(リンク切れ、「404」(Not found)エラー、クラッシュ、プログラミング言語「JavaScript」のエラーなど)に関するデータを収集する
  • ヒートマップモニタリング
    • ユーザーがどこに時間を費やし、どの要素とやりとりしているかを示すマップを作成する。Webサイトやアプリケーションのどの要素がユーザーを引き付けているかを特定できる
  • ネットワークパフォーマンスモニタリング
    • レイテンシ(データがネットワークを移動して目的地に到達するまでに要する時間)やスループット(一定時間内に転送される実際のデータ量)などを監視する
  • ページロードモニタリング
    • ページを開くのにかかる時間を測定し、パフォーマンスの問題を検出する
  • リソースロードモニタリング
    • サードパーティーAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)といった外部リソースがパフォーマンスにどのように影響するかを監視する
  • セッションリプレイモニタリング
    • Webサイトやアプリケーションを訪問している個々のユーザー行動を追跡する。ユーザーがWebサイトやアプリケーションをどのように使用しているか、ボトルネックは何かを把握できる

RUMの利点

 RUMへの取り組みは組織にさまざまなメリットをもたらす。主なメリットを以下に挙げる。

  • 可用性
    • RUMツールは異なる地域やWebブラウザでのWebサイトやアプリケーションの可用性(Webサイトやアプリケーションが利用できるかどうか、快適さはどうか)といったデータを提供する。サービス全体の安定性や使いやすさを把握するのに役立つ
  • パフォーマンス
    • 開発者や運用担当はユーザーの行動や、ネットワークのパフォーマンスを分析する。その結果、問題があれば改善につなげられる
  • セッショントラッキング
    • RUMツールには、ユーザーがWebサイトやアプリケーションを閲覧する際の移動経路を報告する機能がある。組織はこれによって、ユーザー体験に関する理解を深められる
  • 異常とエラーの検出
    • RUMツールはWebサイトやアプリケーションで発生した異常やエラーをデータとして収集する。このデータを分析することで開発者は、修正が必要なWebサイトやアプリケーションの問題を素早く特定できる
  • 新機能のテスト
    • 新機能が提供された際、RUMツールを使うことでユーザーの実際の体験を把握できる。新機能にユーザー体験を損なう問題があればそれを迅速に発見し、修正ができる
  • リソースの最適化
    • RUMツールを使えば、Webサイトやアプリケーションでパフォーマンスが非効率になっている部分を特定できる。非効率を改善することでインフラの設備や処理能力を無駄なく活用し、インフラ費用を削減できる可能性がある
  • コンバージョン率の向上
    • RUMツールで取得した、ユーザーがWebサイトやアプリケーションでどのように行動しているのか、どこで離脱しているのかといった情報から、ユーザー体験を改善するヒントを得られる。それを基に改善を進めることで、コンバージョン(商品購入や会員登録など、企業が目指す目標達成)率を向上させられる可能性がある

RUMの制限や欠点

 一方で、RUMには以下のような制限や欠点もある。

  • 本番環境でのみ利用可能
    • RUMツールは実際にWebサイトやアプリケーションを使っているユーザーの行動を監視するため、開発環境やプレプロダクション環境では基本、機能しない
  • 多数の実ユーザーが必要
    • RUMツールは実際にWebサイトやアプリケーションを使っているユーザーが多いほどデータ量も多くなり、分析の精度が高まる。一方で、ユーザーの数が少なければ、集まるデータは不十分で、あまり効果が出ない
  • データの取得が難しい
    • RUMツールはJavaScriptのコードを使ってユーザー行動のデータを取得することが一般的だ。だが、最近はJavaScriptのコードによるトラッキングをブロックするWebブラウザの使用が広がっているので、情報の取得が難しい場合がある
  • サーバの可視性の欠如
    • RUMツールはユーザー視点でのパフォーマンスに焦点を当てている。そのため、サーバのパフォーマンスを直接に可視化できない
  • 大量のデータ生成
    • RUMツールは実際にWebサイトやアプリを使用しているユーザーの行動やパフォーマンスに関する大量のデータを生成する。このため、そのデータを活用するためには別途可視化ツールが必要になる

 後編は、RUMのユースケースを取り上げる。

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