開発や業務プロセスの改善を迅速に進めたいというニーズに応えるのが「ローコード開発」と「BPM」だ。一見似ている両者だが、アプローチや活用場面は大きく異なる。それぞれの違いを押さえて適切に活用しよう。
ローコード開発とBPM(ビジネスプロセスマネジメント)を活用すれば、ほとんどの企業が業務の迅速化や効率化の恩恵を受けられるようになる。ローコードとBPMは、どちらも「より少ないリソースで、より多くの業務をより短時間で実行する」ことを支援する手法だ。ただし、この2つの共通点はそれにとどまる。ローコード開発とBPMは、それぞれ異なるプロセスに重点を置いており、使われるツールや手法も大きく異なる傾向にある。
そうした違いはあっても、両者がそれぞれの手法で似たような目標の達成を目指しているという点が重要だ。場合によっては、ローコード開発ツールを使ってBPMを実施するなど、両者を組み合わせることもできる。ローコード開発とBPMを個別に活用して業務効率を高める方法と、両者を組み合わせてメリットを最大化する方法を解説する。
ローコード開発ツールを採用すると、開発のスピードと効率が向上する。これは、ソフトウェアの開発に必要な時間や専門知識が少なくて済むためだ。この特性により、ローコード開発はユーザー自身がソフトウェアツールを作成する必要があるプロジェクトや業務フローで、迅速なイノベーションを可能にする。
非エンジニアの従業員、いわゆる「市民開発者」が自らソフトウェアを構築できるようになる点も大きい。これによって、技術部門の専門家に依頼してアプリケーションが完成するのを待つ必要がなくなる。自ら開発して導入することで、スケジュールの遅れを回避できる。
一方、BPMの主な価値は、業務フローを自動化し、ビジネスプロセスの改善を促進できる点にある。BPMツールは、処理のボトルネック(処理の停滞ポイント)を特定・解消することで、プロセス完了までにかかる時間を短縮する。リソースの利用における無駄や過剰を可視化し、意思決定の質を高めるためのインサイトを提供することにも役立つ。
ローコード開発とは、ソフトウェア構築に必要なコード記述の量を最小限に抑える開発手法の一つだ。通常、ローコード開発環境には、各種機能や業務ロジックに対応したコードモジュールがあらかじめ用意されており、ユーザーはこれらを活用してアプリケーションを構築できる。
多くの場合、こうしたモジュールはドラッグ&ドロップ式のユーザーインタフェースで操作できるようになっている。ユーザーは、画面上でモジュールを組み合わせることで、目的とするソフトウェアアプリケーションを実装できる仕組みだ。
ただし、アプリケーションのカスタマイズや設定のために、多少のコードを書く必要が生じる場合がある。この点が、コーディングを一切必要としないノーコード開発ツールとの違いだ。とはいえ、ローコードの開発プラットフォームで必要となるコーディングは最小限で、開発者がゼロから全てのコードを記述する従来の開発手法と比べれば、労力ははるかに少ない。
ローコード開発は、主に2つのビジネスニーズに応える形で活用されており、それぞれ対象となるユーザーも異なる。
ローコード開発では、あらかじめ構築されたコードモジュールを利用できるため、チームはアプリケーションを非常に短時間で実装できる。ソフトウェア開発者やIT部門のメンバーが、あえてローコードツールを活用することもある。彼らは本来、ゼロからコードを書けるスキルを持っているが、開発スピードを上げたり、手作業の多いコーディングプロセスを自動化したりする目的で、ローコード開発を選ぶケースがある。
ローコード開発では、ソフトウェアの構築に求められる専門的な知識を大幅に減らせる。この点は、市民開発者にとって大きなメリットとなる。市民開発者とは、プログラミングスキルは限定的だが、自身の業務に役立つツールを自ら作りたいと考えるビジネス部門のユーザー(例えば人事部門や財務部門の従業員)を指す。
| メリット | 説明 | 対象ユーザー |
|---|---|---|
| アプリ開発スピードの向上 | あらかじめ用意されたモジュールの使用により、ゼロからコードを書くことなく、ビジュアルインタフェースを用いてソフトウェアを迅速に開発できる。 | 作業スピードを速めたいプロの開発者 |
| スキル要件の緩和 | ローコードにより、ソフトウェア開発に必要な技術スキルを軽減できる。 | 市民開発者、またはコーディングの経験がないビジネスユーザー |
BPMは、企業が業務プロセス全体を分析・モデル化し、継続的に改善を重ねることで、業務の効率と成果を最適化する取り組みだ。この取り組みは、プロセスの中に潜むボトルネックを特定し、改善することを目的とする。具体的には、「リーンシックスシグマ」などの改善手法を活用しながら、組織変革の一環として実施されることが多い。
BPMが重要とされる理由は、企業で日常的に使われている業務プロセスやワークフローの多くが、必ずしも最大限の効率性や費用対効果を実現できていないからだ。たとえある時点では最適化されていたとしても、新たな業務ツールの導入やビジネス要件の変化によって、従来のプロセスが非効率なものになってしまうこともある。BPMは、そうした非効率の原因を見つけ出し、適切に対処するための体系的なアプローチを提供する。その結果、継続的な業務改善を可能にし、ビジネス全体の効率向上に貢献する。
BPMには以下のようなメリットがある。
次回は、BPMにローコード開発を取り入れる例やそのためのツールを紹介する。
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