効果的なデータバックアップ予算を作成するには、ITチームがデータ保護の要件を検討し、ビジネスが支出可能な範囲内で適切なバックアップ戦略を選択する必要がある。
バックアップの可用性と整合性は、ビジネスの適切な運営にとって極めて重要だ。安全で信頼性の高いバックアップは安価ではないが、データ損失から守る最後の防衛線となることが多い。バックアップが不十分だと、最初から効率的にデータをバックアップするよりもはるかに高くつくことになる。
残念ながら、適切に管理されたバックアップには多大なコストがかかる傾向にあるため、多くの企業はコストをできる限り小さく抑えようとする。ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃に直面しているのに、古くてテストされていないバックアップしかないという状況は芳しくない。適切なデータバックアップ予算が不可欠だ。これにより、バックアップを実行し、必要なときに使用できるようにするための資金が確保される。では、ITチームはどのようにしてバックアップ予算を算出すればよいのか。
データバックアップ予算のコストを算出するために、ITチームは以下の質問に答える必要がある。
全てのデータが同等に重要なわけではない。これは、「ビジネスを継続するために最も重要なものは何か、そのデータがなくてもどのくらい持ちこたえられるか」と考えるとよい。これにより、優先度の高いシステムが明らかになり、予算をどこに集中的に配分すべきかが明確になる。
データ量が増え続ける中、そのデータのバックアップと保存のコストは上昇の一途をたどるだろう。企業がバックアップするデータ量は、バックアップメディアなどの予算決定に影響する。大手クラウドプロバイダーの多くは、オンプレミスとクラウドベースのコンピューティングの両方に対して、コストはかかるが、継続的なデータ保護を提供している。大量のアーカイブデータがある場合、テープが最も手頃な価格のメディアになるかもしれない。
金融や医療などの規制業界では、長期的な記録保持の要件がある。場合によっては、何十年も前までさかのぼって記録が必要になることもある。ITチームは、データ予算を作成する際にこれらの要件を考慮する必要がある。長期的な保存と管理、およびデータへのアクセシビリティーについても検討しなければならない。
企業が望む頻度でデータをバックアップすることは可能だが、それにはコストがかかる。企業が対処できるデータ損失量と、重要なデータを維持、復旧するためにバックアップがどこまで必要かを判断する。
数時間の作業を失うのは比較的軽微だが、主要な収益を生み出すシステムが数時間ダウンすると、多大な損失になる可能性がある。許容されるダウンタイムを計算するための定評のある式がある。
よく引用される「データの単一コピーはバックアップではない」という言葉がこれほど現実味を帯びたことはない。最新のランサムウェアの中には、バックアップを認識し、バックアップが破損するまで待ってから攻撃するものもある。そのため、良識的な3世代のバックアップポリシーを持つことが賢明だ。イミュータブルバックアップは、ランサムウェアに対して特に効果的だ。イミュータブルバックアップは、読み取ることはできるが、指定された期間は変更や削除ができない。現在、ほとんどのクラウドベンダーは、何らかのイミュータブルバックアップを標準機能の一部として提供している。
テストは、手遅れになって被害(データの損失)が発生するまで、見過ごされがちな項目の一つだ。仮想ハードウェアを最小限のコストで、数秒で起動できる今日の世界では、テストを怠る言い訳はない。ただし、バックアップのテストにはコストがかかることを認識しておく必要がある。テスト復元と検証を行うには、管理者の時間が必要だ。
バックアップは安全で暗号化されている必要がある。暗号化されていないバックアップが悪意のある者の手に渡ると、深刻な信用失墜のリスクがあり、場合によっては規制当局からの罰金などの処分や、それ以上の被害が発生する可能性もある。データバックアップに組み込まれる暗号化とセキュリティのレベルは、予算に影響を与える可能性が高いだろう。
企業のコスト最小化戦略は、上記の質問に対する回答次第だ。ITチームは、不要なコストを避けつつ、既存のバックアップ計画が企業のニーズに合っているかどうかを判断する必要がある。
例えば、全てを頻繁にバックアップする必要があるわけではない。変更されないデータを毎日バックアップする必要はない。余分なバックアップを実行することなく、企業のニーズに合ったバックアップスケジュールを確立する。
クラウドベースのオプションは、使いやすく、ディスクアレイやテープなどのハードウェアコストと、メンテナンスコストを削減する。その一方で、クラウドプロバイダーと協力する際の柔軟性が低下する。ITチームは、長期的な関係とコスト管理の問題を検討する必要がある。データを適切にアーカイブすることで、コストを削減できる。
最後に、予期せぬ出費は必ず発生する。バックアップの目的に合わせ、余裕のあるデータバックアップ予算を設定するとよい。
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