半導体大手のIntelが苦境に立たされている。巨額赤字に陥り、工場計画や人員を大幅に削減。競合AMDやNVIDIAに押される中、再建の鍵は資源配分とデータセンターやAI分野での競争力回復にかかっている。
半導体業界では、拡張一辺倒の戦略が相次いで頓挫している。「十分な需要がない段階で早過ぎる投資に踏み切った」――IntelのCEOリプブー・タン氏は、2025年第2四半期(2025年4〜6月期)の決算でそう振り返った。
同社の2025年第2四半期に決算は、売上高が128億6000万ドルで、純損失が29億ドルに達した。中でも半導体製造を請け負うファウンドリー部門が深刻で、売上高44億ドルに対して、営業損失が31億7000万ドルに膨らんだ。
深刻な赤字を受け、同社はドイツとポーランドで計画していた新工場を白紙撤回し、オハイオ州で進める280億ドル規模のチップ工場も建設ペースを落とすと表明した。コスタリカの検査および組立業務をベトナムとマレーシアの既存拠点に統合する方針も打ち出し、グローバル製造体制の大幅な見直しを進める。
約2万1400人を対象とするレイオフは2025年末までに完了予定で、従業員数は9万6400人から7万5000人へ約22%縮小される見通しだ。
これらの方針転換を洗い出すと、需要見通しの甘さと投資タイミングの誤りという共通点が浮かぶ。同社はどこに再建への活路を見いだすのか。
調査会社J. Gold Associatesの社長兼アナリストであるジャック・ゴールド氏は、大規模レイオフの効果について「減損費用の縮小と人件費そのものの圧縮が収益を押し上げる」と分析している。従業員にとっては厳しい決断だが、同社には固定費を削る必然があった。
軌道修正策として、同社はPCやサーバで広く採用されているx86アーキテクチャのプロセッサ事業に資源を集中させ、データセンター市場で勢いづくAdvanced Micro Devices(AMD)からシェアを奪回すると宣言した。AMDはサーバ向けプロセッサ「EPYC」シリーズで、ここ数年のうちに急速にシェアを伸ばしている。
その勢いは2024年第3四半期の決算で数字として表れた。AMDのデータセンター部門売上は35億ドルに達し、Intelの33億ドルを初めて上回った。調査会社Hyperframe Researchのアナリストであるスティーブン・ソプコ氏は逆転の背景について、「AMDは製品面で優れた進化を遂げているだけではなく、IntelがAI分野で出遅れたことを好機として活用した」と指摘する。
ソプコ氏は「Intelのような大企業は方向転換に時間がかかるが、タンCEOは組織を徹底的に見直し、埋もれた強みを掘り起こしている」と評価する。
タン氏は競争劣勢を挽回する策として、「同時マルチスレッド」(SMT)の再導入を表明した。SMTは単一のプロセッサコアで複数の処理を同時処理し、空いている演算資源を活用して性能を高める技術である。
IntelはノートPC向けプロセッサ「Lunar Lake」で省電力を優先し、SMTを搭載しなかった。この決断は前CEOパット・ゲルシンガー氏の方針だったが、同氏は2024年12月に退任している。
タン氏は「SMT非搭載では競争上不利だ。復活こそ性能格差を縮める鍵になる」と語り、今後のチップ設計については自ら最終承認すると明言した。
米調査会社Moor Insights & Strategyのアナリストであるマット・キンボール氏は「Intelが再び市場シェアを伸ばす余地は十分にある」と前向きに見る。ただし条件として「勝敗が決まるのは、メーカー名ではなく、『1ワット当たり』と『1ドル当たり』の性能を厳しく比較して採用を決めるハイパースケール事業者の市場だ」と指摘する。
IntelはAI分野で出遅れており、GPU(グラフィックス処理装置)大手のNVIDIAが大規模モデルのトレーニング分野では支配的な状況だ。タン氏は後れを取り戻す策として、AI推論(学習済みモデルの実運用)と、AIエージェント(自律判断型AI)に資源を集中させる方針を掲げる。
キンボール氏はこの方針を「良い計画だ。推論分野にはまだ競争余地が大きいが、長期的な戦略として理にかなっている」と述べ、Intelの巻き返しに期待を示す。
Intelの再建は、過去の過剰投資を糧に資源をどう振り向けるか、そしてデータセンターとAIの両分野で存在感を取り戻せるかどうかにかかっている。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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