SATA HDDではなく「SAS HDD」「SSD」の価格上昇――その訳は?ストレージ価格が新たな局面に

SSDの単価が2025年3〜9月にかけて大幅に上昇した。一方HDDは、SAS接続型が25%近く上昇。ストレージ価格動向は新たな局面を迎えている。

2025年09月17日 07時00分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

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 SSDの1GB当たりの単価は、過去2四半期(2025年3〜9月)に大幅に上昇した。一方、HDDは、SAS(Serial Attached SCSI)接続型の1GB当たり単価が上昇したのに対し、SATA(Serial ATA)接続型は安定して推移した。SSDは生産過剰で価格が下落していたため、メーカーが価格引き上げを狙って生産抑制を続けていた。そのためSSDの価格上昇に関しては予測されていたものだが、ストレージ価格動向は新たな局面を迎えている。

SSD、HDD価格変動の要因

 SAS接続HDDの価格上昇の一因として考えられるのは、SSDと同様に、メーカーの減産によって供給過剰が解消されたことだ。SAS接続HDDは、性能要件が高いAI(人工知能)アプリケーション向けの大規模データストレージとして需要が高まっている可能性もある。

 SSDの価格は2025年3月には1GB当たり0.079ドルだったが、そこからの半年間で8.8%上昇し、同年9月には0.086ドルとなった。SSDにはマルチレベルセル(MLC)SSD、トリプルレベルセル(TLC)SSD、クアッドレベルセル(QLC)SSDがある。データサンプル数が少ないQLC SSDを除外して計算すると、同年9月のSSDの価格は1GB当たり0.093ドルで、同年3月比で17.7%の上昇となる。

 SAS接続HDDの価格は、2025年3月から9月にかけて1GB当たり0.049ドルから0.051ドルと4%強上昇した。2024年9月(0.041ドル)と比べると、25%近い上昇となっている。

 SATA接続HDDの価格は安定しており、2025年3月は1GB当たり0.035ドル、9月は0.036ドルだった。

 なお、2025年においても、HDDがデータストレージの主流であることに留意する必要がある。

 SSDに使用されるフラッシュメモリの価格は、2023年末から2024年初頭にかけて天井に達した。メーカー各社が価格引き上げと収益向上を目指し、生産を抑制したことが背景にある。SSDの価格は2024年4月に1GB当たり0.095ドルに達し、2023年10月の0.075ドルから26.67%の上昇となった。

 当時、SSDの価格は2024年4月以降もさらに高騰するというのが大方の予想だった。だが、生産が増加したものの需要が追い付かず、価格は下落した。

 上述した内容は、ストレージ製品価格比較Webサイト「diskprices.com」のデータに基づきComputerWeeklyが算出したものだ。diskprices.comはAmazon.comから毎週平均700件以上のストレージ製品の価格や仕様に関するデータを収集している。データはSSDとHDDの種類ごとに分類され、1GB当たりの平均価格が算出される。

 調査対象となるストレージは以下の通り。

  • MLC SSD
    • MLCはメモリセル(データの記憶素子)1つに2bitを記録する方式
  • TLC SSD
    • TLCはメモリセル1つに3bitを記録する方式
  • QLC SSD
    • QLCはメモリセル1つに4bitを記録する方式
  • その他、不特定のSSD
  • SAS接続のHDD
  • SATA接続のHDD

 対象となるストレージの容量は、HDDは1TB未満〜30TB、SSDは1TB未満〜12TBだ。

 以上の価格データは、主に一般消費者や中小企業向け製品のものだ。このため、例えば、主にシーケンシャルアクセス(データの先頭から順番にアクセスしていくこと)を必要とするユースケース向けに、より高い記憶密度を提供するQLC SSDのデータはあまり含まれていない。

 それでも、これらの価格データは、膨大な収集データに基づいているため、SSDとHDDの価格動向を示すのに役立つ。企業向けの価格データは公にされないことから、ComputerWeeklyは、以上の価格データをストレージ価格の指標として代用している。

 ユーザーの大半にとっては1GB当たりの価格が主要な判断材料となるが、実際にはストレージのライフサイクル全体にわたる総所有コスト(TCO)も重要だ。TCOには購入価格の他にも、消費電力やメンテナンスコストなどが含まれる。

 SSDは、1台当たりの価格はHDDよりも高めだが、メンテナンスコストは低い傾向にある。クラウドストレージベンダーBackblazeの調査によると、同社の2023年第2四半期(2023年4〜6月)時点でのSSDの年間故障率(AFR)は0.9%だった。その後SSDのAFRは公表されていないものの、2025年2月の報告によると、2024年のHDDのAFRは1.57%だった。

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