主要「BaaS」9つを比較 失敗しない選び方のポイントは?BaaSの選び方【後編】

最適なBaaS選びは、企業のDR戦略の成否を分ける一手だ。それぞれに強みが異なる中で、自社の要件に合うサービスはどれなのか。主要な9つのBaaSの特徴と、選定に失敗しないための7つの評価基準を解説する。

2025年09月17日 05時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

 企業の事業継続において、データ保護と災害復旧(DR)は重要課題の一つだ。この課題を解決する有力な手段として、外部の専門ベンダーがバックアップの実施、管理を担うBaaS(サービスとしてのバックアップ)がある。

 市場にはさまざまなBaaSがひしめき合っており、自社の要件に最適なサービスを見極めるのは容易ではない。本稿は9つの主要なBaaSを取り上げ、その特徴を紹介するとともに、自社に合うBaaSを選ぶための7つのポイントを解説する。

主要なBaaS9選

 以下では、2025年における主要なBaaSとそのベンダーを紹介する。以下のリストは、主にForrester Research、Gartner、IDCといった調査会社の市場分析やレビューに基づいている。

1.Acronis Cyber Protect Enterprise

 Acronisの法人向けサイバーレジリエンスサービス「Acronis Cyber Protect Enterprise」は、バックアップ機能を中心としつつ、サイバーセキュリティやランサムウェア(身代金要求型マルウェア)対策など、幅広い機能を含む総合セキュリティツールだ。そのため、データ保護とセキュリティ対策を一括で実現するサービスを求める企業にとっては有力な選択肢になり得る。一方で、純粋なバックアップ機能を求める場合、他の専門的なBaaSベンダーのサービスほどバックアップ分野に特化しているわけではない点には注意が必要だ。

2.AWS Backup

 クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)で稼働するシステムのバックアップには、「AWS Backup」が手軽な選択肢となる。AWS Backupは、AWS内に用意したデータ復旧用システムに、仮想マシン(VM)やデータなどを復旧することも可能だ。ただし、このサービスはAWSに特化しているため、AWSで保管しているIT資産に対して利用する方が、より効果的なデータ保護が可能になる点には注意しなければならない。AWSのサービスをオンプレミスシステムで利用できる「AWS Outposts」など、AWSと互換性のあるハイブリッドクラウドサービスを利用すれば、オンプレミスシステム内のVMやデータも限定的にバックアップできる。

3.Cohesity DataProtect

 Cohesityは、複雑さを抑えながら大規模なデータを保護することに注力している。同社の「Cohesity DataProtect」は、その目標を達成するために、ユーザビリティを高めるAI機能を提供する。これによってバックアップ費用の最適化、仮想的なエアギャップ(ネットワークからの物理的な隔離)を利用したランサムウェアリスクの軽減といった作業を支援する。小規模なデータ保護には過剰な場合があるが、大企業での運用には適する。

4.Commvault Cloud

 Commvault Systemsの「Commvault Cloud」は、企業向けのサイバーレジリエンスサービスだ。データバックアップ機能に加え、データ管理機能やコスト最適化機能を提供する。バックアップシステムのストレージやアーキテクチャの自由度が比較的高く、バックアップの保管先を、複数のクラウドサービスにしたり、クラウドサービスとオンプレミスシステムの両方にしたりできる。

5.Druva Data Security Cloud

 Druvaの「Druva Data Security Cloud」は、主に使いやすさに重点を置いている点が特徴のBaaSだ。価格設定の面において、競合他社と比較して有利な傾向にある。ただしバックアップにかかる費用は、バックアップするデータ量や、いかに効率よく重複排除できるかによって大きく変動する。その半面、バックアップデータの保管先が限られるなど、一部の制約もある。シンプルさと導入費の低さを優先する場合には良い選択肢だ。

6.HPE Zerto Software

 Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE Zerto Software」は、継続的データ保護を掲げている。このサービスは、HPEが2021年に買収したZertoのデータ保護技術「Continuous Data Protection」(CDP)を組み込んでおり、リアルタイムでのデータバックアップを実施する。これは定期的なバックアップではなく、本番環境のシステムとバックアップデータを常に同期させることを目指すものだ。ダウンタイム(システムの停止時間)やデータ損失の可能性を最小限に抑えることが最優先事項であれば、HPE Zerto Softwareは魅力的な選択肢になり得る。

7.Veeam Data Cloud

 Veeam Softwareの「Veeam Data Cloud」は、さまざまな種類のデータやシステムを保護できるBaaSだ。シンプルな管理性を備えつつ、企業レベルでの利用もできる。セキュリティ機能が充実している一部の大企業向けBaaSとは異なり、Veeam Data Cloudはデータ保護に特化している。このアプローチは、バックアップ単体の機能を求める企業には魅力的だが、より広範な領域で活用できるBaaSを導入したい企業にとっては欠点になる可能性がある。

8.Rubrik Data Protection

 Rubrikの「Rubrik Data Protection」の特徴は、高度な暗号化やデータの不変性(イミュータビリティー)の確保といった、特に厳格なセキュリティおよびコンプライアンス機能を提供する点だ。これらの機能は、攻撃者によるデータ改ざんを防ぐのに役立つ。こうした機能の多くは他のBaaSツールでも実装可能だが、Rubrik Data Protectionでは標準で利用しやすい傾向にある。

9.NetBackup

 Veritasの「NetBackup」は、企業向けのデータバックアップおよび復旧ツールで、IT資産の保護に活用できる。同様のサービスと比較して、費用の最適化に注力している点が特徴だ。バックアップに最も費用対効果の高いストレージを選択したり、バックアップ処理中にサーバのCPUを効率的に使用したりといった戦略でこれを実現する。

自社に最適なBaaSの選び方

 豊富な選択肢がある中で、IT担当者はどのようにして自社の要件を満たすBaaSを選べばよいのか。その答えは、以下に挙げる複数の要素を比較検討することにある。

1.ストレージ

 BaaSが対象とする保存先のストレージは何かを確認する。バックアップデータを保管するために複数のクラウドストレージサービスから選択できるのか、あるいは単一の保管先に限定されるのかといった点を見る。

2.費用管理

 バックアップにかかる費用を抑えるためにどのような機能が利用できるかを確認する。例として、低価格のクラウドストレージサービスを活用できるか、バックアップ処理中に使用するハードウェア容量を削減できるかといった点がある。

3.拡張性

 BaaSが扱えるデータ量に制限はあるかどうかを確認する。具体的な項目で言えば、総ストレージ容量やバックアップ作成時の最大I/O(入出力)レートなどだ。

4.バックアップ方式

 複数のバックアップ方式が実行可能かどうかを確認する。保護対象のデータやシステムの完全なコピーを作成する「フルバックアップ」に加えて、前回のバックアップ以降に変更されたデータのみをコピーする「差分バックアップ」を実行できるBaaSもある。

5.対象システム

 どのような種類のIT資産をバックアップできるかを確認する。データベースやファイルシステムといった従来のIT資産の他、より高度なBaaSは、「Microsoft 365」のようなSaaS(Software as a Service)のデータも保護できる。

6.セキュリティ機能

 バックアップを安全に保つために、どのようなセキュリティ機能を提供しているかを確認する。攻撃者の侵入を防ぐ手段としてエアギャップを実装できるか、バックアップデータを自動でスキャンできるかなどの項目をチェックする。

7.処理速度

 バックアップ処理の完了までにどれくらいの時間がかかるかを確認する。重複データのコピーを回避したり、ネットワーク転送前にデータを圧縮したりするなど、バックアップを高速化するための機能を提供しているかも調べる。


 市場に「最高のBaaS」は存在しない。だが機能、処理速度、費用といった要素を考慮することで、企業は自社のニーズに最適なBaaSを見つけ出すことができる。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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