放置すれば企業にとって問題を生み続ける「技術的負債」には、どう対処法すればよいのか。まず手を付けるべき「負債の診断」と、戦略的に実行すべき削減計画を、具体的な指標と手順を交えて説明する。
技術的に最適とは言い難い近道を選択したり、レガシーな技術を使って事業運営を続けたりした結果、システムの内部に蓄積されていくのが「技術的負債」だ。放置すればするほど「利息」が膨らみ、最終的には企業のイノベーションを妨げ、成長を鈍化させる深刻な経営課題になる。レガシーな技術の保守に人員や工数が奪われ、セキュリティリスクは増大し、顧客満足度も低下しかねない。
このような深刻な課題を生む技術的負債に対し、企業は何をすべきか。以下では自社システムの現状を正確に診断するための3つの指標、7つの削減戦略、その成果をどう測定するかまでを、専門家の知見に基づいて解説する。
企業が技術的負債を削減する第一歩は、問題を正確に診断することだ。技術監査や企業の成熟度評価を通じて、いつシステムを更新すべきかの判断材料にする。
ツールや指標を用いて、技術的負債の兆候を分析することが有効だ。IT予算を「保守」と「イノベーション」にどう配分しているのかを調べることも手掛かりになる。
システムの監査を通じて非効率な運用、古いシステム、性能上の問題を洗い出す。時代遅れ、あるいは不要になった技術を前提とした設計が残っていないかどうかも確認する。
具体的には以下の3つの要素を評価し、負債を定量化するとよい。
これらを評価した上で、技術的負債を解消するための推定費用と、新しくシステムを構築する費用を比較検討する。
ITリーダーには、新規技術への投資と技術的負債の解消のバランスを取りつつ、技術的負債を削減していくことが求められる。技術的負債を削減するために、ITリーダーが実行すべきステップを以下に示す。
企業向けAI(人工知能)ツールを手掛けるUnframeの共同創設者兼CEOシェイ・レビ氏は、AIツールの発展によって、企業は技術的負債への対処に注力しやすくなったと指摘する。「AIツールの使用を前提としない状態から、AIツールの使用を前提とした『AIネイティブ』な状態に移行することには、単に技術的負債をなくす以上に多くのメリットがある」と同氏は語る。
AIツールは企業の技術的負債からの迅速な脱却を支援できる可能性を秘めている。AIツールは人々の働き方を変革し、企業のイノベーションを加速させる力を持つ。
テクノロジーが変化し続ける限り、技術的負債の発生は避けられない。技術的負債の削減は、一度きりの取り組みではなく、企業が備えておくべき戦略的な能力だ。確立された戦略(プレイブック)を採用することで、ITリーダーはリスクを低減しつつ、企業の将来を見据えた着実なペースでイノベーションを継続できる。
ITリーダーは、以下をはじめとするKPI(重要業績評価指標)を設定し、システムを評価する必要がある。
技術的負債の管理に際して、ジョン氏はKPIに加えて「人間の洞察力」も必要だと述べる。同氏はKPIには表れない、対処すべき課題についてチームリーダーから報告を受けており、こうした現場の洞察を吸い上げるための社内の定期的なコミュニケーションが極めて重要だと指摘する。
レビ氏は、「全ての技術的負債を同時に解決しようとするのではなく、まず着手する点を決めることが重要だ」と語る。一度に多くの問題に対処しようとすると、企業は新たなシステムやサービスの開発に着手できなくなり、企業としての競争力を失うからだ。「AIツールを活用して技術的負債の削減を支援するベンダーも続々と登場している」と同氏は付け加える。
ジョン氏は、技術的負債をゼロにすることはほぼ不可能だと指摘する。IT業界は変化の速度が速く、市場の要求に応えるためにベンダーが不完全な製品を素早くリリースすることを選んだ結果、時代遅れな技術が生まれやすいからだ。「企業はシステムを一定期間運用した時点で一度立ち止まり、現状を評価しなければならない」と同氏は解説する。その上で、顧客満足度やセキュリティといった分野において、改善が必要な領域への投資が、費用削減やビジネスでの優位性といったメリットを生み出すと判断できるのであれば、そこに投資すべきだという。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA:University of California, Los Angeles)の経営大学院(Anderson School of Management)のCIOであるハワード・ミラー氏が着任した当初、同大学院にはクラウドサービスの活用に関する明確な戦略が存在しなかった。そのため同氏は、この状況を技術的負債であると同時にイノベーションの機会であると捉え、クラウドファースト戦略を打ち出した。同氏は、技術的負債への対処は、ITリーダーに何を更新し、何に取り組むべきかを示す「革新的な戦略」でもあると考える。
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