「3-2-1ルール」他社はどうアレンジしてる? 情シスに贈るバックアップのトレンド5選2026年のバックアップ戦略【後編】

2026年に向けて、IT管理者が押さえるべきバックアップの主要トレンドにはどのようなものがあるのか。後編では5つを紹介する。

2025年12月11日 05時00分 公開
[TechTarget]

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 ランサムウェアの脅威増大や規制の強化と、IT部門は2026年もさまざまなバックアップの課題に取り組んでいく必要がある。本稿は、2026年に向けて知っておきたい、バックアップのトレンドを5つ紹介する。

2026年に向けて知っておくべきバックアップのトレンドは?

トレンド5.3-2-1バックアップルールの改変

 「3-2-1バックアップルール」(注1)は、効果的でレジリエントなバックアップインフラの構築に貢献してきた。一方、さらに効率的かつ効果的なバックアップやリカバリプロセスを構築しようと、このルールを以下のように改変している企業もある。

※注1:本番データを含めて合計「3」つのデータコピーを保持し、保管には「2」種類以上の異なるストレージ媒体を使用し、そのうち「1」つをオフサイト(本番拠点とは別の場所)に保管するという、データ保護の基本的なルール

  • 3-2-1-1ルール
    • 標準ルールに、イミュータブル(一度書き込んだデータを変更できないという仕様)なコピーまたはエアギャップ(ネットワークからの物理的な隔離)されたコピーを1つ追加する。
  • 3-2-1-1-0ルール
    • 上記のルールに、自動テストと検証を含める。
  • 3-1-2ルール
    • 「3」つのデータコピーを「1」種類のメディアで作成し、「2」つのオフサイトに保管する。クラウドにおける地理的冗長性を優先する手法だ。

トレンド6.ゼロトラストバックアップインフラの活用

 ゼロトラストの原則をバックアップに適用することで、ユーザーに必要最低限の権限のみを与える「最小特権の原則」を徹底し、「決して信頼しない」前提で運用することで内部脅威に対抗することができる。バックアップデータへのアクセス制御に、多要素認証(MFA)と論理的なデータ分離を組み合わせることで、バックアップデータへのアクセスをアイデンティティ(認証情報)単位で管理できる。

 ゼロトラスト戦略でバックアップを強化するに当たっては、以下を組み合わせることが有用だ。

  • イミュータブルなバックアップの利用
  • エアギャップ方式のストレージの利用
  • データの暗号化
  • 継続的な監視

 これらを利用することで、バックアップジョブを狙って進化を続けるセキュリティ脅威の軽減に役立つ可能性がある。

トレンド7.イミュータブル、エアギャップ型バックアップの利用

 ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)をはじめとしたマルウェアに関する懸念が続く中、バックアップジョブを隔離して完全性を保護することで迅速な復旧が可能になる。イミュータブルバックアップとエアギャップストレージは、バックアップジョブの改ざんを防止しデータを保護する。

 エアギャップバックアップでは、リムーバブルテープやリムーバブルドライブ、セキュアなクラウド上の保管庫をストレージとして使用する。ただし、手動でのプロセスが必要になる場合があり、バックアップや復旧に時間がかかる場合がある。

 イミュータブルバックアップには、WORM(Write Once Read Many:1回書き込み/複数回読み取り)と呼ばれる機能が一般的に用いられている。WORMは、クラウド、オンプレミス両環境で自動的、継続的な保護を実現するだけでなく、規制の順守を支援する役割も担う。

トレンド8.データガバナンスとコンプライアンスの徹底

 データ保護規則は変化を続けている。2026年には、バックアップ管理者に課題がもたらされる可能性がある。課題は、データの保存先や転送先を特定地域内にとどめる「データローカライゼーション」やデータの制御と管理に関する権利を意味する「データ主権」に関わるものだ。具体的な対策としては、以下がある。

  • 企業のニーズに合わせたデータガバナンスやフレームワークを構築する。
  • コンプライアンスに対応した、堅牢(けんろう)かつ自動化されたバックアップを確立し、ポリシーの順守を徹底する。
  • データの検出、分類、廃棄、ライフサイクル管理を効果的に実行できる手段を導入する。
  • IT部門に高度なスキルを持つ熟練したエンジニアを確保し、復旧やインシデントに迅速に対応できる体制を整備する。
  • 測定基準とレポートの作成を義務付け、企業として準備が整っていることを証明できるようにする。

トレンド9.ESGや持続可能性への取り組みの推進

 データバックアップと「ESG」(環境、社会、ガバナンス)との関連を考えた場合、考慮すべき事項となり得るのが、エネルギー効率、透明性、データセキュリティ、コンプライアンスだ。持続可能性を向上させるには、バックアップシステムにおいて、効果的なセキュリティと災害復旧(DR)機能を維持しながら、エネルギー効率の高いストレージ、カーボンニュートラル、規制コンプライアンスを優先する必要がある。具体的には、以下の対策がある。

  • 費用対効果が高く、エネルギー効率に優れたバックアップツールを導入する。
  • ESGレポートの作成を既存のITバックアップ運用に組み込む。
  • レガシーシステムを特定して、排除する。
  • ESG要件を調査して、組織の状況を公表する準備を整える。

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