「静かな退職」以外にも「静かな解雇」「静かな崩壊」という働き方のトレンドが登場した。いずれも表面上の対立を伴わず、会社や上司と従業員の結び付きが弱まっていく。それぞれの違いと対策を、TechTargetジャパンの記事を再構成してまとめた。
退職はしないものの、必要最小限の業務のみをこなす「静かな退職」(Quiet quitting)という言葉が2020年代初頭に登場して以来、「静かな○○」という働き方のトレンドは収束するどころか複雑化している。TechTargetジャパンは、2025年に掲載した記事の中で「静かな解雇」(Quiet firing)と「静かな崩壊」(Quiet cracking)という現象を紹介した。
「静かな○○」に共通するのは、表面上の対立を伴わず、会社や上司と従業員の結び付きが弱まっていく点だ。これらの「静かな」トレンドは、生産性の低下にとどまらず、従業員の燃え尽き症候群や退職を引き起こすため、経営リスクとして顕在化しつつある。本稿では、TechTargetジャパンの記事を基に、それぞれの現象について解説する。
静かな退職は、従業員が実際に退職届を出すわけではないが、仕事への熱意を失った状態だ。必要最小限の作業をこなし、仕事とプライベートの境界線を引きワークライフバランスを保つ。静かな退職を選んだ従業員は以下のような行動を取る。
(出典:辞めないけど、もう頑張らない――「静かな退職」の兆候とは)
背景にあるのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降に加速した「仕事よりもプライベートやメンタルヘルスを優先する」という価値観の転換だ。ビジネス向けSNS「LinkedIn」が2022年1月に公開した年次調査レポート「Global Talent Trends」の2022年版によると、パンデミックで時間ができたことで、自分のキャリアを振り返り、ワークライフバランスを整えることにかじを切る労働者は増加した。
パンデミックを契機にWeb会議ツールが普及した一方、オフィスで偶発的に始まるコミュニケーションが減ったため、「上司からサポートを得られておらず、自分が評価されていない」と感じる従業員もいる。賃金が理想通りに上昇しないことも、静かな退職を誘発する要因の一つという(出典:辞めない、でも頑張らない――「静かな退職」がじわり広がる理由)。
テレワークからオフィスへの出社回帰の動きが広がる中、注目を集めるようになったのが「静かな解雇」だ。上司が従業員に直接的な解雇を通告するのではなく、従業員が自発的に退職するように仕向けることだ。具体的には以下のような行為によって、従業員を不快な状況に追いやる。
(出典:出社したけど居場所がない――オフィス回帰は「静かな解雇」の口実だった?)
静かな解雇は、上司のマネジメント能力不足やコミュニケーション不足などによって意図せずしばしば生じるが、上司が意図的に引き起こす場合もある。パフォーマンスの低い従業員と難しい話し合いをしたくない上司が、マネジメント業務をする代わりに退職に追い込むような言動をする場合もある(出典:“辞めろ”とは言わない「静かな解雇」が起きている現代的な理由)。
じわじわ広がっているトレンドが「静かな崩壊」だ。ガラスにひびが入るように、従業員の不満が募り、徐々に仕事への意欲が失われ、燃え尽き症候群や退職につながる現象だ。従業員研修プログラムを提供するTalentLMSが米国の従業員1000人を対象として2025年3月に実施した調査によると、54%が何らかの「静かな崩壊」を経験したことがあり、5人に1人は「頻繁もしくは継続的に経験している」という(出典:「静かな退職」より深刻? 部下が知らぬ間に病んでいく「静かな崩壊」の正体)。
静かな退職は、従業員が意図的に起こす行動だが、静かな崩壊は意図的ではない。業務内容が不透明だったり、上司との関係性が悪かったりして不安や不満が生じると、やがて静かな崩壊を招く恐れがある(出典:「上司が話を聞いてくれない」――心が病んでいく「静かな崩壊」の原因と対処法)。静かな崩壊の兆候は表面化しにくく、ある日突然、欠勤や退職といった形で露呈する。
「静かな○○」は、いずれも上司と従業員のコミュニケーション不全に起因することが多い。従業員は不満や不安を口に出せず、上司はその兆候を見逃すか、あるいは見て見ぬふりをする。その結果、両者の関係性が弱まり、従業員の生産性が低下するだけではなく、燃え尽き症候群に陥ったり退職したりする。
こうした現象を食い止めるには、一例として、組織の透明性を高める、業務量を適正化する、従業員がキャリアへの不安や業務上の悩みを安心して話せる場を設ける──などの対策を講じる必要がある。
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