大阪府が行政システムに「Azure」を選んだ理由 機密情報はどう守る?乱立する小規模システムに対処

自治体のDX推進において、システムの運用負荷と浪費は深刻な課題だ。大阪府は行政システムのインフラとして「Microsoft Azure」を採用した。機密データ保護というパブリッククラウド特有のリスクをどう排除したのか。

2026年04月17日 05時00分 公開
[CaseHub.NewsTechTargetジャパン]

 自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進において、乱立する業務システムの最適化は避けて通れない課題だ。大阪府も例外ではなく、「大阪府のデジタル改革の実現に向けた中期計画」に基づいて行政サービスの高度化を進める中で、従来のシステム構成の限界に直面していた。複数の小規模なシステムが混在することで、CPUなどのITリソースを有効活用できず、管理の煩雑化が深刻化していたのだ。

 この課題を解消するため、大阪府はパブリッククラウドの導入を決断した。新たな共通インフラとして採用されたのは「Microsoft Azure」だ。システム構築は、他自治体でのパブリッククラウド導入実績を持つネットワンシステムズが担当し、日本マイクロソフトと協働でインフラを整備した。本インフラは2026年4月から本格稼働している。

 機密性の高い行政システムをパブリッククラウドに移行する上では「高度なセキュリティの確保」が最大の壁となる。大阪府は行政データをどのように保護し、インフラ管理におけるリソース不足と複雑化をどのように解決したのか。

セキュアな閉域網をどう構築した?

 大阪府は、行政事務を支える業務システム群が稼働する共通インフラを、パブリッククラウドのMicrosoft Azureに構築した。システム構築を担当したネットワンシステムズが2026年4月9日に発表した。IT資産の一元管理による運用効率化と、専用回線による高度なセキュリティを両立し、2026年4月に本格稼働を開始している。

 大阪府は「大阪府のデジタル改革の実現に向けた中期計画」に基づき、行政サービスの高度化と利便性向上を目指すDXを推進している。しかし従来の共通インフラでは、小規模なシステムが複数混在することでCPUなどのITリソースを十分に活用できず、管理の煩雑化が課題となっていた。こうした背景から、業務システムの利用状況に合わせて構成を変更でき、費用最適化が図れるパブリッククラウドの導入を決めた。

 Microsoft Azureが選定されたのは、管理機能を活用したIT資産の一元管理に加え、数日単位での迅速なリソース増減が容易なためだ。ハードウェアを調達する従来手法と比べ、構築の遅延リスクや待機コストを低減できる他、機器のサポート切れ(EOL)に伴うリプレース作業も不要となるため、長期的な運用負荷や費用の大幅な削減が見込める。

 行政システムに求められる高いセキュリティを備えた専用(閉域)ネットワークを構築できる点も決め手となった。具体的にはパブリックインターネットを経由せず、オンプレミスシステムとMicrosoft Azureを専用線で直接接続する閉域網サービス「Azure ExpressRoute」による専用回線接続を用いる。併せて、Microsoft Azure内の異なる仮想ネットワーク(VNet:Virtual Network Peering)同士をMicrosoftの高速なバックボーンネットワークを介して直接接続する「VNetピアリング」も利用している。

図 図 共通インフラの概要(提供:ネットワンシステムズ)《クリックで拡大》

 インフラの構築に当たっては、日本マイクロソフトと協働体制を敷くネットワンシステムズをパートナーに選定した。ネットワンシステムズの他自治体における実績に基づき、状況に応じたサービス設定や、定期的なアセスメント分析を通じた改善提案が高く評価されたためだ。今後はネットワンシステムズのマネージドサービスを活用し、月次報告やモニタリング、障害対応などを一括で受託する運用体制を整備する。

 大阪府財務部行政DX推進課の川戸守氏は、「情報システムの最適化を図る一環としてDXを推進している。ネットワンシステムズには安定稼働はもとより、引き続き必要な技術支援や提案を期待している」と述べている。

(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「大阪府、Azure上に共通基盤を構築 IT資産の一元管理でコストと運用の最適化図る」(2026年4月10日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。


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