越後製菓が「20年モノのブラックボックス」を無停止で捨て去った“現実解”一斉に切り替える「ビッグバン刷新」を回避

20年間の度重なるカスタマイズで肥大化したオンプレミス人事システム。紙とExcelに依存する100人規模の勤怠管理。限界を迎えていた越後製菓が、業務停止リスクを負わずにシステムを移行した方法とは。

2026年06月19日 05時00分 公開
[CaseHub.NewsTechTargetジャパン]

関連キーワード

基幹システム | 人事 | SaaS


 独自の業務要件に応えるため、オンプレミスの人事給与システムにカスタマイズを重ねる。その代償としてシステムはブラックボックス化し、新たな制度設計や運用変更に追従できない「技術的負債」へと変貌する――。こうした光景は、企業のIT部門に付き物だ。

 米菓メーカーの越後製菓も、約20年間使い続けてきた人事給与システムがまさにこのわなに陥っていた。新潟県内に点在する6つの製造工場では、シフト管理や休暇申請を紙や「Microsoft Excel」で実施するアナログな運用が残っていた。その結果、総務担当者が約100人分の勤怠情報を目視で確認して、手入力やCSVファイルで旧システムに取り込む作業が常態化し、大きな負荷となっていたのだ。

 現場の負担とシステムの限界を前に、越後製菓はシステムの全面的な刷新を検討する。しかしここで直面するのが、レガシーな基幹システムを刷新する際、ある日を境に旧システムから新システムへと全社一斉に切り替える「ビッグバン型」の刷新による恐怖だ。日々の運用に直結する基幹システムを一斉に切り替えることには、致命的な業務停止リスクが伴う。

 そこで越後製菓が選択したのは、全てを1つの巨大なシステムに集約するのではなく、既存の仕組みを生かす進め方だった。複雑な給与計算ロジックを標準機能で網羅しつつ、現場で稼働している各SaaS(Software as a Service)の人事データをシームレスに自動連携させるという、現実的なアプローチの全貌を紹介する。

無停止での刷新を可能にした“つなぐ”戦略

 越後製菓は、若手人材の採用・定着を見据えた人事給与制度の改定とバックオフィス業務の効率化を目的に、パトスロゴスの大企業向け人事給与SaaS「Combosite人事給与」およびHR(人事)連携システム「PathosLogos」を採用した。2026年6月5日、パトスロゴスが発表した。人事データ高度分析ツール「PathosLogosサーチ」も併せて導入し、既存のIT資産を生かしながら約100人規模の勤怠・給与管理体制を再構築してデータに基づく人的資本経営への転換を推進する。

 米菓や切り餅などの食品メーカーとして事業を展開する越後製菓は、少子高齢化に伴う労働人口の減少や働き方の変化を見据え、従来の年功序列型から役割、能力を重視した透明性の高い人事給与制度への見直しを進めていた。しかし、約20年間使い続けてきたオンプレミス型の旧人事給与システムは長年のカスタマイズによってブラックボックス化しており、新たな制度設計や運用変更に適合させづらい状態にあった。また、新潟県内に点在する6つの製造工場では、シフト管理や休暇申請を紙やMicrosoft Excelで実施するアナログな運用が残っており、総務担当者が約100人分の勤怠情報を目視で確認し、手入力やCSVで旧システムに取り込む作業が大きな負荷となっていた。

 システム選定に当たっては、日々の運用に直結するシステムを一斉に切り替えるビッグバン型の刷新による業務停止リスクを避けるため、既存の仕組みを生かす進め方を模索した。その結果、複雑な給与計算ロジックを追加開発なしに標準機能のみで実装できる製品性能を評価。すでに現場で導入されていたクラウド人事労務ソフトウェア「SmartHR」と、新たに採用する勤怠管理SaaS「KING OF TIME」をPathosLogosによってつなぎ、データをシームレスに自動連携できる点も決め手となった。単にシステムを納品するだけではなく、週2回に及ぶ長時間の打ち合わせなどを通じて現場の課題に寄り添う、ベンダーの「共創型のアプローチ」による手厚い伴走体制も採用を後押しした。

 新システムの導入によって、約100人分の人事データ連携が自動化され、総務担当者が行っていた目視確認や手入力作業が大幅に削減された。転記ミスや属人化のリスクが解消された他、Combosite人事給与の「未来発令機能」を活用することで、退職時の社会保険料控除停止などの予約登録が可能になり、作業漏れや徴収ミスの防止が実現している。複雑なロジックを標準機能で網羅したことで運用の透明性が向上し、業務の引き継ぎや分担も容易になった。

 今後は、今回構築したデジタルインフラを起点として、併せて導入したPathosLogosサーチの本格活用を進める。各拠点に散在していた人事データを集約、分析することで、勘や経験に頼らないデータに基づく適材適所の配置や、戦略的な人員計画の立案、育成施策の展開など、段階的な人事DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。

(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「越後製菓、人事基盤刷新で千人分のデータ連携自動化 手入力削減」(2026年6月5日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓

瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓
MFA(多要素認証)を入れたから安心という常識が崩れ去っている。フィッシング集団「Tycoon2FA」が摘発されたが、脅威が完全になくなったというわけではない。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...