一斉に切り替える「ビッグバン刷新」を回避
越後製菓が「20年モノのブラックボックス」を無停止で捨て去った“現実解”
20年間の度重なるカスタマイズで肥大化したオンプレミス人事システム。紙とExcelに依存する100人規模の勤怠管理。限界を迎えていた越後製菓が、業務停止リスクを負わずにシステムを移行した方法とは。
独自の業務要件に応えるため、オンプレミスの人事給与システムにカスタマイズを重ねる。その代償としてシステムはブラックボックス化し、新たな制度設計や運用変更に追従できない「技術的負債」へと変貌する――。こうした光景は、企業のIT部門に付き物だ。
米菓メーカーの越後製菓も、約20年間使い続けてきた人事給与システムがまさにこのわなに陥っていた。新潟県内に点在する6つの製造工場では、シフト管理や休暇申請を紙や「Microsoft Excel」で実施するアナログな運用が残っていた。その結果、総務担当者が約100人分の勤怠情報を目視で確認して、手入力やCSVファイルで旧システムに取り込む作業が常態化し、大きな負荷となっていたのだ。
現場の負担とシステムの限界を前に、越後製菓はシステムの全面的な刷新を検討する。しかしここで直面するのが、レガシーな基幹システムを刷新する際、ある日を境に旧システムから新システムへと全社一斉に切り替える「ビッグバン型」の刷新による恐怖だ。日々の運用に直結する基幹システムを一斉に切り替えることには、致命的な業務停止リスクが伴う。
そこで越後製菓が選択したのは、全てを1つの巨大なシステムに集約するのではなく、既存の仕組みを生かす進め方だった。複雑な給与計算ロジックを標準機能で網羅しつつ、現場で稼働している各SaaS(Software as a Service)の人事データをシームレスに自動連携させるという、現実的なアプローチの全貌を紹介する。
無停止での刷新を可能にした“つなぐ”戦略
越後製菓は、若手人材の採用・定着を見据えた人事給与制度の改定とバックオフィス業務の効率化を目的に、パトスロゴスの大企業向け人事給与SaaS「Combosite人事給与」およびHR(人事)連携システム「PathosLogos」を採用した。2026年6月5日、パトスロゴスが発表した。人事データ高度分析ツール「PathosLogosサーチ」も併せて導入し、既存のIT資産を生かしながら約100人規模の勤怠・給与管理体制を再構築してデータに基づく人的資本経営への転換を推進する。
米菓や切り餅などの食品メーカーとして事業を展開する越後製菓は、少子高齢化に伴う労働人口の減少や働き方の変化を見据え、従来の年功序列型から役割、能力を重視した透明性の高い人事給与制度への見直しを進めていた。しかし、約20年間使い続けてきたオンプレミス型の旧人事給与システムは長年のカスタマイズによってブラックボックス化しており、新たな制度設計や運用変更に適合させづらい状態にあった。また、新潟県内に点在する6つの製造工場では、シフト管理や休暇申請を紙やMicrosoft Excelで実施するアナログな運用が残っており、総務担当者が約100人分の勤怠情報を目視で確認し、手入力やCSVで旧システムに取り込む作業が大きな負荷となっていた。
システム選定に当たっては、日々の運用に直結するシステムを一斉に切り替えるビッグバン型の刷新による業務停止リスクを避けるため、既存の仕組みを生かす進め方を模索した。その結果、複雑な給与計算ロジックを追加開発なしに標準機能のみで実装できる製品性能を評価。すでに現場で導入されていたクラウド人事労務ソフトウェア「SmartHR」と、新たに採用する勤怠管理SaaS「KING OF TIME」をPathosLogosによってつなぎ、データをシームレスに自動連携できる点も決め手となった。単にシステムを納品するだけではなく、週2回に及ぶ長時間の打ち合わせなどを通じて現場の課題に寄り添う、ベンダーの「共創型のアプローチ」による手厚い伴走体制も採用を後押しした。
新システムの導入によって、約100人分の人事データ連携が自動化され、総務担当者が行っていた目視確認や手入力作業が大幅に削減された。転記ミスや属人化のリスクが解消された他、Combosite人事給与の「未来発令機能」を活用することで、退職時の社会保険料控除停止などの予約登録が可能になり、作業漏れや徴収ミスの防止が実現している。複雑なロジックを標準機能で網羅したことで運用の透明性が向上し、業務の引き継ぎや分担も容易になった。
今後は、今回構築したデジタルインフラを起点として、併せて導入したPathosLogosサーチの本格活用を進める。各拠点に散在していた人事データを集約、分析することで、勘や経験に頼らないデータに基づく適材適所の配置や、戦略的な人員計画の立案、育成施策の展開など、段階的な人事DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「越後製菓、人事基盤刷新で千人分のデータ連携自動化 手入力削減」(2026年6月5日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[Datadog Japan合同会社] Wantedlyのオブザーバビリティはどう進化したか 10年の軌跡と実装の変遷 -
事例
[Datadog Japan合同会社] エラー検知から原因調査までを最短5分で、日経新聞に学ぶアプリ監視の改善方法 -
製品資料
[Datadog Japan合同会社] クラウドのコストと利用状況を可視化&最適化、「Datadog」の実力とは? -
事例
[Datadog Japan合同会社] クラウド移行で見えた監視の死角、SBI証券が選んだ統合オブザーバビリティ実践 -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] リソースに限りのある中堅企業で「多層防御」の運用負荷をどう乗り越える?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
2
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
5
高額GPUを買っても成果ゼロ? 「プライベートAI」の落とし穴
-
6
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
7
「仮想化基盤の利用・検討状況」に関するアンケート
-
8
COBOLをJavaに変換して終わりではない AI活用に検証の壁
-
9
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
10
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー